まさしく車と一つになれるスポーツワゴン。マツダ「CX-5」(ディーゼルモデル)に試乗する

2020-05-26

実は試乗検討に入れていなかったマツダの主力モデルとなる「CX-5」。
予てより、2016年末にフルモデルチェンジされたということもあり、そのデザイン性や品質面も大きく向上したという情報を受け、元々試乗検討していた「CX-3」を一旦保留にし、「CX-5」を試乗させていただきました。


【外観インプレ】

今回試乗させていただいた個体は「CX-5 XD PROACTIVE」というグレードで、燃料がディーゼルの駆動方式が2WD(FF)となるグレードとなります。
ボディカラーは、マツダの定番カラーとなる「ソウルレッドクリスタルメタリック」となります。

フルモデルチェンジされた「CX-5」の大きな特徴としては、まずはヘッドライトが細くなったというところ。
このヘッドライトが細くなるという傾向は、コンパクトSUV「CX-3」にも適用されていますが、その他にジャガー「F-PACE」やマセラティ「レヴァンテ」といったSUVもヘッドライトが細くなっており、表情の鋭さだけでなく車体のフォルムを最大限に引き出すためにヘッドライトの面積を小さくすることで、より立体的な表現力が生み出されているように感じられます。

続いての特徴が、フロント・グリルですね。
フルモデルチェンジ前の「CX-5」は、以下のように”5ポイント・グリル”になっており、グリルバーのようなものが5本並べられているわけですが、今回のフルモデルチェンジによりグリルがメッシュ(網目)になっていますね。
このメッシュはレクサスの”F SPORT”グレードのみに適用されるもので、ある意味専用デザインというイメージでしたが、「CX-5」は全てのグレードがメッシュとなり、更に高級感と威圧感が増していますね。

他にもフロント部のエアインテークが無くなり、フォグランプが隠れるように配置されていますね。
そして、何よりも一番の大きな特徴としては、フロントノーズが10cm長くなったことにより、SUV特有のノッペリとしたスタイリングからかなりスタイリッシュに修正されており、車体形状がSUVというよりもスポーツワゴンに近いものになっていますね。
実質このフルモデルチェンジされた「CX-5」は、カタログ上ボディタイプが「ステーションワゴン」という風にカテゴリ化されており、まるでセダンのような乗り心地を追求したモデルになるともお聞きしています。

全体的なフォルムを見ても、やはり相当に無駄な部分を削ぎ落としているのだという印象で、しかしドッシリとした風貌は増していて、シームレスで精悍な造形を生み出しているこのデザイン力はマツダの努力の結晶でもありますね。

続いて内装ですが、とにかく「質感が高い」の一言。
正直、今までマツダの車に乗ったことが無かったということもあって、最近のマツダ車の内装や質感などには大きく注目していなかったのですが、ステアリングホイールのデザインからダッシュボード、オーナメントパネル、インストールメントパネル等、どれをとってもモノトーンなデザインでまとめられており、非常に快適な居住空間を生み出しているのだなぁと感心。
シートは若干硬めでありながらも、すわり心地は抜群ですね。

ちなみに、今回の試乗車である「CX-5 XD PROACTIVE」に装着されているメーカオプションは以下の通り。
 ・ドライビング・ポジション・サポート・パッケージ
 ・パワーリフトゲート
 ・CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー(フルセグ)
 ・Bose(R)サウンドシステム+10スピーカ

【主要諸元・スペック・価格】
 ・排気量2.2L 水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ(ディーゼル)
 ・最高出力:175ps、最大トルク:420Nm
 ・全長/全幅/全高:4,545mm/1,840mm/1,690mm
 ・ホイールベース:2,700mm
 ・最低地上高:210mm
 ・最小回転半径:5.5m
 ・車両総重量:1,600kg
 ・燃費:18.0km/L
 ・価格:3,002,400円

パワートレインにおいては、マツダ車お得意のクリーンディーゼル仕様の直4ターボ。
いわゆる”ドッカンターボ”ではなく、直線性のある伸びのある加速を実現させたターボで、最大トルク420Nmという高トルクは走行時のストレスを大きく低減させるディーゼルの特筆すべき点だと思います。
サイズ面においては、フロントノーズがロング化されたにもかかわらず全長が4,545mmというところはかなり驚きで、トヨタ「ハリアー」の4,720mmよりも175mmも短いのですね。

なお価格においては、
・ガソリン車の2WD(FF)モデル・・・2,462,400円~2,986,200円(税込)
・ガソリン車の4WDモデル・・・2,689,200円~3,213,000円(税込)
・ディーゼル車の2WD(FF)モデル・・・2,775,600円~3,299,400円(税込)
・ディーゼル車の4WDモデル・・・3,002,400円~3,526,200円(税込)
となっています。

【試乗インプレ】
さて、早速「CX-5 XD PROACTIVE」に乗り込みますが、ドアを開けたときの”ガコン”という重厚感ある音は「さすがマツダ」という印象で、乗り込みへの期待が高まります。
ドアを開けてシートに乗り込むときの姿勢ですが、ある程度上半身の姿勢を崩して乗らないとルーフに当たってしまうという問題がありますね。
また、ドアを閉めたときの”バタン”という音も、これまた高級車のようであり、更に期待値がたかりますね。
ちなみに、フルモデルチェンジ前の「CX-5」のドア開閉時の音は”パタン”という軽い音であることも、中古車にて確認済み。
この辺りは、ドアパネルにつけられているゴム等を改良しているとのこと。

担当者さんより、一通りの内装や操作方法の説明を受け、早速シートベルトを締めます。
早速エンジンスタートです。
エンジン始動音はディーゼル特有の大きな音なのかと思いきや、かなり「静か」。
しかも、エンジン始動時の振動等もシートに伝わってくることがほとんどなく、非常にゆったりした状態で運転に集中することができます。

パーキングブレーキは自動式のため、早速センターコンソールにあるシフトをDへ。
ディーラを出るときにブレーキを離せばパーキングブレーキが自動的に解除され、クリープ発進することができるのですが、アクセルを踏み込んだときの印象としては少々柔らかめな印象。
そして、ここでかなりの衝撃を受けたのが、ペダルの配置ですね。
マツダが理想と考えるペダルの配置は、前輪を前方に移動し、脚を自然に伸ばした位置にペダルを配置するというもので、これまで試乗してきた個体のペダルの配置は、若干”左寄り”だったわけです。マツダは、この若干”左寄り”というのが理想ではない配置とのことで、このあたりの工夫にもかなりの衝撃と感心が高まります。

このまま早速市街地や、信号の少ない田舎道を走るわけですが、どのルートを走っても共通で言えるのが「横揺れがほとんど無く、乗り心地が良い」ということ。
SUV特有のフワフワした印象とは全く別で、むしろセダンやステーションワゴンのようなしっかりとした印象。
上述にもある通り、「CX-5」はSUVではなく、ステーションワゴンというボディタイプとなるため、デザインのみならずこういった乗り心地の面でも改良に改良を重ねているため、良い意味で期待を裏切りますね。

そして一番気になる加速性についてですが、アクセルを深く踏み込んだ時のレスポンスは驚くほどにリニアで、これはフルモデルチェンジ前のアクセル・レスポンスよりも0.4秒も早く改善することができたとのこと。
おかげで、アクセルを踏み込んでから車が加速するまでのラグがほとんど無く、おまけに最大トルク450Nmというスペックもあって、平坦な道に限らず傾斜のある坂道でもグイグイ加速していくわけですね。
ディーゼルに試乗したことのない私にとっては、かなり新鮮な試乗となりましたが、ここまで快適に踏み込めるというのは中々に珍しいのではないかと思ったりもします。

【気になる点】
個人的に一番気になったのは、パドルシフトが無いという点で、なぜかこれは「CX-5」に限ってディーラオプション(税込20,665円)になっているということ。
マツダ「アテンザ」「アクセラ」「CX-3」「デミオ」には標準装備されているだけに、ここは何とか標準装備してほかったなぁと感じます。

【総括】
以上より、マツダ「CX-5」ディーゼルモデルは、エクステリア・インテリアにおいてフルモデルチェンジ前よりも格段にデザイン性や品質、質感といった全ての要素を向上させ、なおかつ走行性能においても「走る」「曲がる」「止まる」以外に「横揺れしにくい」、急ブレーキしたときの「前のめり」の改善といった目に見えない改善魂が明確にわかる一台であったと言え、車と一つになったと言っても過言ではないスポーツワゴンであったと思います。

また、今回初めての試乗となるディーゼルモデルですが、明らかに自分が想像していたものを飛び越えており、かつマツダの立ち止まらない技術力の進歩を肌で感じることのできた、かなり貴重な試乗であったと思います。