ハイブリッドには無い本気の楽しさが味わえる。レクサス「LC500」に試乗する

2020-05-26

さて、かなり延び延びとなってしまいましたが、ようやくレクサスのフラグシップクーペの本命となる100%ガソリンエンジンモデル「LC500」に試乗。
今回も試乗させていただいたのは、いつもお世話になっているレクサス宝塚さん。
当初は展示車として7月頃までは試乗できないかも?という話でしたが、いつの間にか試乗可能となっており、すかさず試乗の予約を完了。

試乗コースも街中を始め、アップダウンの激しい峠道、そして車通りの少ないストレートと、とにかく試乗するには理想的なコースが多く潜んでおり、その試乗コースを存分に味わわせていただきました。
そして、ハイブリッドモデルである「LC500h」では味わえない、ガソリンエンジンならではの楽しさが「LC500」にはあることが、”試乗する”ことではっきりとわかりました。

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【外観インプレ】
今回試乗させていただいた個体は、「LC500 S Package」というグレードで、上述の通り、フラッグシップクーペの100%ガソリンエンジンモデルで、車両本体価格は1,400万円となっています。
“S Package”と”ベースグレード”では、ルーフが炭素繊維強化樹脂・カーボン(CFRP製)となっており、いかにもスポーツ仕様であるのに対し、”L Package”では、ガラスルーフとなっているため、どちらかというとラグジュアリー仕様といった棲み分けになりそうですね。
ちなみに、CFRP製のルーフは「RCF Carbon Exterior Package」にも採用されており、重心を下げて走行性能を高めるために、CFRP製の軽いルーフを採用したという背景があります。

ボディカラーは、「LC500/LC500h」からの新色となる「ネープルスイエローコントラストレイヤリング」というオプションカラー(税込162,000円)で非常に派手な色合いとなっていますが、見方によってはイエローにもゴールドにも見える不思議なカラーで、レクサスの塗装技術の高さが伺えますね。

最近のレクサスのボディカラーは、商品性を高めるために塗装品質の徹底をしており、特に塗装被膜の平滑性を高めるために、水を掛けながらやすりを使って研磨する”水研磨”によって艶のある外観品質を高めています。
そして、ボディーに色を着けるベース塗装においてもひと手間かけており、光沢のあるボディカラーに対しては、先にシルバー系の塗料を塗ることで発色性を高め、本来のボディカラーを上から重ねて塗装し、最後に耐候性や耐久性等を確保するクリア塗装を施す工程を行うことで、上のような美しいボディカラーが生み出されるわけですね。

話は若干逸れてしまいましたが、外観インプレに戻りましょう。
やはり全体のシルエットは、近年のスポーツクーペのような美しい流線形を描いており、以前試乗した「LC500h L Package」のホワイトのような膨張色とは異なり、非常に引き締まったボディに見えます。

リヤデザインも非常にオシャレで、合わせ鏡の技術を活かしたリヤテールランプは、間違いなく国産車両の中でもトップクラスの複雑さと技術力の高さを持っていますね。
今回撮影しているのは、日中のテールランプですが、是非とも夜に輝くテールランプも見てみたいですね。

【スペック】
・排気量5.0リッター V型8気筒DOHCエンジン
・最大出力:477ps
・最大総トルク:540Nm
・駆動方式:後輪駆動(FR)
・トランスミッション:電子制御10速オートマチック
・全長:4,770mm、全幅:1,920mm、全高:1,345mm
・最低地上高:135mm
・最小回転半径:5.3m
・燃費:7.8km/L(JC08モード走行燃費消費率)

上記のスペックを確認していくと、全体的なサイズ感は「LC500h」と変わらずで、パワートレインも「GS F」「RC F」と変わらずの男前V8 5.0Lエンジンですね。
最低地上高においては、「LC500h」よりも5mm低い135mmで、トヨタの現行「プリウス」や「クラウン」と同じ高さであり、最小回転半径も5.3mと現行「プリウス」よりも小回りが利くというのも大きなポイントですね。

【試乗インプレ】
さて、早速「LC500h L Package」のポップアップ式ドアハンドルを引き、車内に乗り込みます。

車内へ乗り込む際は、サイドシルの位置が非常に低く、すんなりと脚から侵入することができるため、結構楽な方ですね。
正直パッと見では、ちょっと乗降りしにくそうなイメージはありますが、Bピラーの角度が中央に沿っていて、乗降りする際に頭がルーフに当たらないような工夫が施されているというのがポイント。まるで、オープンカーを乗降りするような感じですね。

ちなみに、シートに乗り込む際に大きく目を引くのが、サイドシル部のカーボン。
これが「LC500h」となうと、カーボンではなくプラスチックとアルミプレートになるため、こういったさり気ない部分においても差別化されており、より一層の高級感が漂ってきます。

また、ドアを開けた際の印象としては、「とにかく分厚い」の一言。
やはりフラッグシップクーペと謳うだけあって、まるでスーパーカーのように重く分厚いドアに近づけており、更に内ドアにはカーボンコンポジットが使用されるという非日常性と高級感が演出されていますね。

ちなみに、カーボンコンポジットはリヤトランクにも使用されており、最近のトヨタ「プリウスPHV」にも使用されていることでも有名ですね。

内装は非常に刺激的なダークローズカラーに、アルカンターラとレザー仕上げ。
シートに座り込んだ時のフィット感は絶妙ですが、少々体格の大きい方にとっては、窮屈に感じることもあるかもしれません。

車内に乗り込んだ後は、シートポジションやサイドミラー位置、ルームミラー、ステアリング位置等の調整を終え、ブレーキを強く踏みながらようやくエンジンスタートです。
エンジンスタート音はやはりV8 5.0Lの大排気量エンジンだけあって、中々の咆哮を奏でます。
早速センターコンソールのシフトレバーを”D”レンジにしてクリープ走行します。

ちなみに、「LC500/LC500h」のシフトレバーは「プリウス」や「CT200h」「HS250h」にあるようなジョイスティックになっています。
ブレーキを踏みながら、ジョイスティックを右側(運転席)に持っていき、そこから手前側に引くことで”D”レンジにシフト。”D”レンジに持って行ったあと、ジョイスティックは自動的に中央に戻ります。
(ちなみにそのままに手前側に引けば”M(マニュアル)”、右側+奥側に押せば”R(リバース)”、右側を2秒以上にキープすれば”N(ニュートラル)”になります)

いつも通り、ディーラを出て、恒例の段差を乗り超えます。
段差については、最低地上高が135mmもあるため、擦る心配は全くありませんね。
段差を乗り越えたときの車体剛性もしっかりしており、レクサスが「LFA以上のボディ剛性を持った本気の1台」と謳うだけあって、身体的ストレスのかからない安定した乗り心地。

早速、街中にて走行するわけですが、とにかくすれ違う車たちからの視線が熱く、いかにも自分は特別な車に乗っているという優越感に浸ることができます。
この辺りは、やはりレクサスの中でも上位モデル且つ特別なスタイリングを持った個体でなければ味わうことのできない瞬間でもありますね。
すれ違う車たちの視線を受けながら、ゆっくりとアクセルを踏み込んでいきますが、やはり自然吸気系のV8エンジンだけあって、アクセルレスポンスは非常に良く、内燃機関を動力として走り出すそのパワーはとにかく圧巻の一言。
21インチのポリッシュ加工されたオプションの極太ホイールを装着しているにも関わらず、路面のロードノイズを拾っているようにも感じられず、アクセルを踏み込んでいる感覚を忘れてしまう程に安定感は抜群。
まるで「美しい身のこなしをする忍者」の如く、軽快に加速していきます。

街中を走行した後は、恒例の峠に差し掛かります。
峠に差し掛かっての上り坂ですが、走行モードを「SPORT S」にしてみると、やはりその身軽さが明確にあらわれ、軽くアクセルを踏み込むだけであっという間に3,000回転まで伸びていきます。

加速力が高いことはもちろんですが、やはりそれ以上に驚いたのは、車体重心の安定感。
アクセルを踏み込んでコーナーに差し掛かるまでは全くわかりませんでしたが、「S Package」と謳うだけあって、CFRP製ルーフによる重心の低さが影響してか、高速域でコーナーに差し掛かっても車体が外側に膨らむことなく、まるでジェットコースターのように狙ったラインに沿って駆け抜けていくわけですね(この辺りはルーフがガラス製となる”L Package”では味わえなかったポイント)。

恐らくロールも相当に高いレベルで設定されているのだと思いますが、コーナーに差し掛かった時の体の揺れはほとんど無く、計算されたスポーツバケット形状シートにフィットしながら、自身の視点を変えることなく、不安の無いドライビングを行えるというのも特筆すべき点だと思います。

「LC500h」でも体感したマニュアルモードでの走行を「LC500」でも味わってみましょう。
トランスミッションを1速にしたままレッドゾーン手前までひたすら回し続けたときのサウンドと振動は、やはり内燃機関特有でしか味わえない楽しさがあり、更に3速まで速度を上げてからコーナーに差し掛かる手前でのパドルシフトによるシフトダウンでのブリッピングは、まるでスーパーカーを操作しているかのような官能的なサウンドを味わうことができます。
もちろん、フットブレーキによる制動力も強力で、「LC500h」のような回生ブレーキとはまた異なり、燃費を一切無視して走りを楽しむことのできる個体だと実感できます。

なお、上述の通り基本的なパワートレインは「RCF」「GSF」と共通であると示していますが、実際に操作してみると、「本当に同じエンジンなのか?」と疑ってしまうぐらいに異なる性格を持っているように感じられますね。

【総括】
以上より、「LC500 S Package」は、ハイブリッドモデルの「LC500h」とは異なる”走り”の楽しさを味わうことができ、まるで「忍者のような美しい身のこなし」は、レクサスのラインナップの中でも「LC500」でしか味わうことのできない特別な1台であると感じました。

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【LCコンセプト】
より鋭く、より優雅に。
ドライバーの意志にクルマが鋭い切れ味で応えながら、優雅に振る舞う。
コーナーにおける減速、旋回、加速という一連の動きのなかで、操作に対するリニアな応答と、穏やかな姿勢変化がもたらす上質な走りは、新たに開発したボディ、シャシー、パワートレーンが一体となって生み出されます。
クルマを操る楽しさ、ロングクルージングの気持ち良さ。
その走りの幅広さと奥深さは、ドライバーの想像を超えていきます。
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最後に、大変貴重なモデルとなる「LC500 S Package」の試乗をさせて頂いたレクサス宝塚さんには心より感謝です。

これまでの試乗記録はコチラにてまとめております。