トヨタの新型「カムリ」に試乗。走り・乗り心地・燃費・高級感ヨシの万能セダン

2020-05-26

さて、ちょっと気になっていたトヨタの新型「カムリ」に試乗。
元々、”セダン”というスタイリングは試乗・購入候補には挙がっていなかったのですが、今回のフルモデルチェンジにより、スタイリングはもちろんのこと、デザインや走行性能、燃費、先進性といった部分では大幅な向上が見られているということで、タイミング良く福井県産業会館にてトヨタの展示会が開催されていたため、すかさず試乗させていただきました。

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【外観インプレ】
今回試乗させていただいた個体は、中間グレードとなる「G」で、フロントロアグリルの金属調塗装、リヤコンビネーションのLED化、ファブリックシート、本革巻きステアリングホイールといったものが標準装備のモデルとなります。
更には、試乗車にしては珍しいモデリスタのフルエアロキットも装着されています。
ボディカラーは、有償オプションとなる”プラチナホワイトパールマイカ(税込32,400円)”が選択。

更に細かい外観インプレについては以下の関連記事にて公開しております。

関連記事:トヨタの新型「カムリ」を見てきた。外観、質感、商品力は間違いなくハイレベルに

まずやはり大きく目を引くのが、このフロントデザインですね。
まるで大きく口を広げたかのような「キューンルック」デザインは、トヨタのラインナップにもある「カローラ・アクシオ/フィールダー」にも精通するものがあり、トヨタの現在のデザインテイストにもなっています。

ただ、ここまで思い切ったフロントデザインというのは、これまでの「カムリ」ではとても考えられない”攻撃的”なデザインであり、”保守性”や”無難さ”を捨て、賛否両論を真正面から受け止めるようなデザインとしてまとめてきたところは、まさしく「進化したトヨタ」を賞賛すべきポイントですね。

ちなみに、今回の試乗車は有り難いことにモデリスタのフルエアロが装着されているということで、外観のインパクトやダイナミックさも大きく向上していますね。
特に、フロントスポイラーの樹脂(ABS)とメッキによる加飾が高級感とスポーティさを演出しており、おまけに地上高さは標準の145mmから54mmローダウンした91mmと車検ギリギリの地上高。

大口を開き、顎が突出するという強面「カムリ」ですが、この角度から見ると若干「ハリヤー」にも見えるのは気のせいでしょうか。
ただ、金属調塗装されたフロントロアグリルとメッキ加飾されたフロントスポイラーとの相性は抜群で、後付けしても十分に映える姿となっているところはトヨタの大きな工夫でもありますね。

サイドはこんな感じ。
フロントスポイラーやサイドスカート、リヤスカートによるダイナミックさがしっかりと表現されていますね。
ただ、個人的にはホイールを純正の17インチホイールではなく、こちらもモデリスタ専用アルミホイールを装着してほしかったところですが、あくまでも乗り心地を向上させた個体でもあるので、やはりここは純正ホイールでのインプレッションが重要なところですね。
ちなみにサイドスカートは標準から41mmダウン、リヤスカートは標準から34mmダウンとなります(ご参考までに)。

リヤも非常に大胆なデザインとなっていますね。
“C”形状を描くようなLEDリヤコンビネーションランプ、リヤ中央に表記される”CAMRY”ロゴが更に高級感を演出。
もちろん、リヤスポイラーの立体感と重厚感、ダイナミックさによって「カムリ」の攻撃的なデザインが増大しています。

【スペック】
・排気量2.5リッター 直列4気筒エンジン+電気モータ
・最大出力:178ps
・最大総トルク:221Nm
・駆動方式:前輪駆動(FF)
・トランスミッション:電子式無段変速機
・全長:4,855mm、全幅:1,840mm、全高:1,445mm
・最低地上高:145mm
・最小回転半径:5.9m
・燃費:28.4km/L(JC08モード走行燃費消費率)

上記のスペックを確認していくと、TNGA(Toyota New Global Architecture)プラットフォームの採用により、車体サイズは前モデルより大きくなるも、低重心で軽量・高剛性ボディを実現し、車高は前モデルよりも25mm低くなっています。
そして、今回トヨタが大きく力を入れたという新設計の2.5Lダイナミックフォースエンジン&ハイブリッドシステムにおいては、高い熱効率と高出力を両立したエンジンとなっており、ハイブリッドシステムの小型化・軽量化・高効率技術を掛け合わることにより、「X」グレードでは33.4km/L、「G」「G”レザーパッケージ”」では28.4km/Lを実現。
おまけに、ガソリンは(ハイオクではなく)レギュラーというのもユーザにとっては非常に有り難いですね。

【試乗インプレ】
さて、早速新型「カムリ」に乗り込みます。
ドアハンドルは、メッキ加飾が加えられ、高級セダンという印象を与えています。
ドアを開けてみると、ドアパネルは意外と薄く、重々しくない印象で女性でも簡単に開けられそうな感じです。
車内に乗り込む際は、サイドシルの位置は結構低いものの、シートポジションが高めだったのか、天井に頭が当たりそうになり少し乗りにくい印象。この辺りはシートポジションによって低く設定すれば全く問題なさそうです。

シートはブラックカラーのファブリックシートとなっており、実際に座り込んだときの感触としては少し”硬め”。
しかし、その硬さが自身の視界を安定させる適度な硬さとなっており、ドライバに安心感を与えるような工夫が施されていますね。
また、シートに座った際のヒップポイントが低く設定されているところも感心するところで、これは車の挙動がよりリニアに感じられるように設計されているためであり、更には低重心化も図られていることで安定した走りを体感できるわけです。
車内に乗り込んだ後は、シートポジションやサイドミラー位置、ルームミラー、ステアリング位置等の調整をします。
シートは、運転席8way&助手席4wayの電動パワーシートとなっており、ステアリングは手動式での調整となっています。

さて、諸々の調整が完了したらブレーキを強く踏みながらようやくエンジンスタートです。
エンジンスタート音は全くの無音。やはりハイブリッドエンジンだけあってエンジン始動時の振動は全くなく、乗員への身体的ストレスを最小限に抑えています。
このままアクセルを踏み込んでいくと、モータに加えて内燃機関も作動するわけですが、意外とエンジンの振動は小さいように感じますね。

早速、第一関門となる小さな段差を乗り越えるところからのスタートとなります。
段差を乗り越えたときの車体の横揺れが抑えられ、車内での安心した空間が維持されています。ここで早くもTNGAプラットフォームの質の高さを体感することができるわけですが、これは先進の溶接技術と構造用接着剤によるボディ剛性の高さから再現できているのですね。

剛性の高さに感心しながら、早速国道8号線の長いストレートにて一気に加速していきます。
走行モードは「ECO」「NORMAL」「SPORT」の3種類に分けられており、まずは「NORMAL」モードでの加速力を確認していきますが、やはり走りと燃費のバランスを掛け合わせた走りだけあって、アクセルレスポンスは直噴エンジンであっても若干のラグがあるように感じられます。
しかし、加速中での路面と路面のつなぎ目を駆け抜けるときの車体の安定感は抜群で、常にフラットな走りを味わっているような感覚になります。

さて、次は「NORMAL」から「SPORT」モードに切り替え、「カムリ」の変貌っぷりを見てみましょう。
「SPORT」モードでのアクセルレスポンスは、非常に鋭く加速時のストレスはほとんど無いことに驚きます。
ただ、それ以上に驚いたのは加速後のエンジンブレーキ(エンブレ)。「SPORT」モード時のエンジンブレーキは、「NORMAL」「ECO」に比べてかなりアグレッシブにかかっており、ちょっとした下り坂でアクセルを離しても、シフトダウンしているわけではないのに一気に減速をするところは”メリハリのある走り”を実現しており、かなり楽しく走らせることができます。
コーナーに差し掛かったときは、やはり車体重心が低いことから、外側に膨らむことはほとんど無く、ちょっとしたオーバースピードでも安定したラインに流せるというスポーティさもありますね。

加速後のフットブレーキの制動力も中々に強く、足回りの強さに加えて、ロードノイズを大きく拾わない徹底したプラットフォームの改善が行われており、「走る」「止まる」といった一つ一つのアクションが均一にバランスが取れているのも特筆すべき点だと思います。
ちなみに、一通り走行しての前方視界においては、フロントピラーがスリム化されたことにより、視界はワイドに。
フロントフード(ボンネット)も低く配置されているため、一部フードによって見えなかったところも改善。
更にはサイドミラーの形状も大型化されているため、フロントに限らずサイド、リヤも十分すぎるほどの視野が確保されていますね。

【価格について】
これだけのハイスペックを有する新型「カムリ」ですが、コストも実は思った以上に抑えられています。

「X」・・・3,294,000円(税込)、[北海道地区]3,315,600円
「G」・・・3,499,200円(税込)、[北海道地区]3,520,800円
「G”レザーパッケージ”」・・・4,195,800円(税込)、[北海道地区]4,217,400円

競合モデルはおそらく、

・日産「ティアナXL」・・・3,213,000円
・ホンダ「アコードLX」・・・3,850,000円
・マツダ「アテンザ・セダン XD 2WD」・・・3,277,800円

になると思われますが、今回試乗させていただいた「G」グレードは、低燃費且つ走りの際立ちがはっきりしているにも関わらず、更にはトヨタの予防安全パッケージとなる”Toyota Safety Sense P(プリクラッシュセーフティシステム、レーンディパーチャーアラート、オートマチックハイビーム、レーダークルーズコントロール)”も標準で装備されるという先進性も確保されて、350万円以下で購入できるということもあり、競合モデルとの比較で見ても、かなり良い勝負をするのではないかと思いますね。

【気になる点】
個人的に大きく気になる点としては、”パドルシフト”が無いということ。
これは全グレード共通で”パドルシフト”が装備されておらず、ディーラオプションにもラインナップされていないため、大きなマイナスポイントでもありますね。
やはり車を操作する上で、ステアリングやアクセルとブレーキに加えて、パドルシフトがあってこそ車本来の楽しさを味わえる一つの必須パーツだと考えているため、この辺りは是非とも付けてほしいところ。

【総括】
以上より、トヨタの新型「カムリ」は、スタイリングやデザイン性、燃費が向上されただけにとどまらず、走りの性能、質感においても大幅に向上し、更には走りの楽しさの中に安心と信頼の予防安全パッケージが標準装備された先進性も加えられた、ある意味「この一台で事足りる」万能型の高級セダンという表現がマッチしているように思いますね。

これまでの試乗記録はコチラにてまとめております。