プジョー「3008」に試乗。ECY受賞も納得、SUV市場を活性化させるダークホース

2022-06-30

さて、以前より検討していたプジョーの新型SUV「3008」に試乗。
2009年に生産開始された初代「3008」から、約8年の時を経てフルモデルチェンジを果たした2代目となる新型「3008」ですが、今年3月にヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー2017(ECY2017)を受賞した個体でもあり、プジョーの新たなプレミアムモデルとして今後のモデル展開にあたる重要なベンチマークになる一台となります。

今回、「3008」を試乗させていただいたのは、私の地元でもあるプジョー福井さん。
こちらのディーラは、福井ヤナセ中央さんを母体に持ち、プジョー福井さん以外にも、隣接するシトロエン福井さん、ポルシェセンター福井さん、メルセデスベンツ福井さんを持っており、それらディーラは全て徒歩圏内に集約された欧州車ディーラとして各社しのぎを削っています。


【「3008」について】
さて、今回試乗させていただいた個体は、「3008GT BlueHDi」というディーゼルタイプの新グレード。
今年の3月に発売された「3008」は、
・ベースグレードの「3008 Allure」
・中間グレードの「3008 Allure LED Package」
・上位グレードの「3008 GT Line」
の3グレードだったのですが、以前フランスが発表した2040年よりガソリン/ディーゼルエンジンモデルの販売禁止にあたって、今回まずはCO2の発生が少ないディーゼルモデルをラインナップ。

あくまでも苦肉の策ではありますが、この方法が意外とメーカにとっては幸運だったのか、売り上げが飛躍的に向上したとのこと。
日本国内においても、「3008」を注文するオーナーのほとんどがディーゼルタイプであるとのことで、パワートレインがガソリンタイプの1.6Lターボエンジンに比べて、ディーゼルタイプは2.0Lターボエンジン。
おまけに自動車税が免税の対象であることや、質感の向上、ガソリンエンジンよりも低燃費であることから新規ユーザからの注文も殺到しているとのことです。

ちなみに、各グレード毎のスペックと価格帯は以下の通り。

【「3008 Allure」「3008 Allure LED Package」「3008 GT Line」】
パワートレイン:排気量1.6L 直列4気筒ターボチャージャー付エンジン
最高出力/最大トルク:165ps/240Nm
燃費:14.5km/L
価格:「3008 Allure」3,540,000円、「3008 Allure LED Package」3,690,000円、「3008 GT Line」3,960,000円

【「3008 GT BlueHDi」】
パワートレイン:排気量2.0L 直列4気筒ディーゼルターボチャージャー付エンジン
最高出力/最大トルク:180ps/400Nm
燃費:18.7km/L
価格:4,260,000円

【外観インプレ】
さて、まずは外観から一通りチェックしていきましょう。
まずはフロントフェイスですが、ライトやフロントグリル等全体的に釣り上ったような印象を受け、ジャガー「F-PACE」やマツダ「CX-5」、レクサス「NX」「RX」に近い高級感と引き締まったフォルムが、プレミアムモデルとしての方向性を確立しているように思えますね。
前モデルの「3008」と比較しても、精密なアッセンブリーと高品質な造り、タフネスさやエレガンスを兼ね備えたデザインにも思えますね。
ちなみに、ボディカラーはアマゾナイト・グレーという特別塗装色で、オフロードモデルにも適した個体であるため、どことなく森林やアマゾンの雰囲気を取入れた淡いグリーンとグレーの中間色を取入れた複雑なカラーとなります。

ちなみに、フロントヘッドライトはLEDヘッドライトを使用。
こういった独特なデザインはフランス車の特徴でもあり、ドイツ御三家にはないファッション性に近いステータスの高さを伺えます。

サイドを確認していくと、オフローダーのようなちょっとした武骨さがあるというよりも、やはりフランス車ならではの角をとったような滑らかなラインが印象的ですね。
ちなみにホイールは、標準の18インチアルミホイールを装着し、プロテクションパーツや堅牢なルーフレールも設定されています。
サイズ感としてはおそらくミドルサイズSUVに部類すると思われ、マツダ「CX-5」やトヨタ「ハリヤー」といったサイズ感が比較の対象になるのかもしれませんね。

あとは、Aピラーからルーフライン、そしてドアシル下部に縁どられたクロームのトリムラインが何とも言えぬ高級感を演出。そして、サイドミラーカバーにもクロームシルバーを加飾しているのも”オシャレ”なポイントですね。

リヤデザインも非常にオシャレな3点式のテールライトとなっています。何となくではありますが、現行のフォード「マスタング」のテールライトにも似ていますね。
これは、”Lion’s Claw”というテールライトで、日本語では「獅子の鉤爪(ししのかぎづめ)」とも言われています。

一通り外観のチェックをした後は、早速車内に乗り込みましょう。
まずはドア取っ手を開けたときの印象としては、意外と軽く、ドアが開いた時の”ガタン”という重厚感とのギャップが素晴らしいところ。
また、ドアトリムや内張りのところはレザーが使用されている等で、ちょっとした高級感が演出されていますが、やはりミラーボタン周りのプラスチックがチープ感を出していますね。こういったところはコストカットしているポイントなのかもしれません。

早速車内に乗り込みますが、サイドシルの位置は意外と低めで、左足から入り込み、シートに座り込むまでの姿勢は非常にナチュラルですね。
ちなみに、インテリアシートは基本的にブラックカラーを基調としており、ステッチはイエローというオシャレっぷり。

おまけにシートマテリアルはレザーとアルカンターラという組合わせで、これが標準装備というのが驚くべき点ではありますね。
シートに座った際の印象としては、国産車両のレザーシートに比べると若干軟らかめ。
座り込んだ時の密着感は絶妙で、やはり少し大きめにシートが作られているからか、自身の体とのクリアランスはあるも、柔らかさがクリアランスをカバーしてくれます。

ちなみに後席はこんな感じ。
後席がリクライニングできないというのはちょっと残念ですが、身長182cmの私でもゆったりと座ることができ、天井に頭をぶつける心配もなさそうです。

さて、ドライバーズシートに戻り、担当者さんより早速インテリアの説明を受けます。
ここで大きく注目したいのは、ステアリングが小口径であるということ。
しかも真円ではなく、台形に近いステアリングホイールとなっており、フェラーリ「488GTB」やランボルギーニ「ウラカン」「アヴェンタドール」といったスーパーカーに近いデザインとなっているところは意外なポイントですね。
もちろん、パドルシフトが標準で装備されているのはグッド。

そして、小口径のステアリングホイールの上にあるのが、12.3インチのヘッドアップディスプレイですね。こちらも非常に先進的な装備にも見え、「3008」が持つ安全装備の画面や速度メータといった基本情報が集約されています。

センターコンソールはこんな感じ。
プジョー「308」から搭載されてきたi-Cockpitの進化版で、より先進的なデザインが印象的ですね。
ナビゲーション画面は8インチのタッチパネル式となります。

特にセンターにある各種トグルスイッチもインパクトがありますが、実際にこれらのボタンが一体どのような機能を果たすのか?というところがわかりにくく、直観的にすぐに操作できるかというと非常に難しいところですね。

ちなみにこんな感じでトグルスイッチを押すと、各ボタンの操作を実行することができます。

【試乗インプレ】
さて、それでは早速「3008」に試乗していきたいと思います。
シートポジションを調整していきますが、ここでの驚きはシート調整が全て手動であること。
サイドミラーは電動格納式なのですが、シート調整に関して全グレード手動というところはちょっとマイナスなポイントですね。

シートポジションの調整が完了したら、ブレーキを強く踏みながら、センターコンソールにあるエンジンスタートボタンを少し長めに押します。
エンジンスタート時のサウンドは、やはり2.0Lのディーゼルターボということで少し重みのある重低音サウンド。

エンジン始動の確認が取れたら、センターコンソールにあるジョイスティックタイプのシフトレバーにて”D”レンジ(手前側に)にスライドします。
この時に注意して欲しいのは、ただ単純にジョイスティックを手前側に引くのではなく、以下の画像のように、ジョイスティックのサイドにある”UNLOCK”ボタンを押しながら手前側に引かないと”D”レンジに切り替わりません。

同様にバックしたいときも、”UNLOCK”ボタンを押しながら”R”レンジ(奥側)に押すことでバックすることができます。
さて、”D”レンジに切り替えたあとは、そのままアクセルを踏み込んでいきます。
「3008」はパーキングブレーキが電動式なので、アクセルを踏み込むことで自動で解除されます。

クリープ走行しながら、早速第一関門となる段差を超えて国道に入るわけですが、新型「3008」より採用された新世代PSA EMP2プラットフォームにより、ねじり剛性の向上と車体重量の軽量化、乗り心地が向上されたことにより、ストレスなく段差を乗り越えてスムーズに国道へ進入することができます。
走行しているときの印象としては、サスペンションは意外と固め。私の勝手なイメージとして、フランス車は”結構フワフワ”しているのかなぁという印象がありましたが、オフロード仕様かつスポーティな足回りに仕上げられている「3008」は非常にどっしりとした印象。
アクセルを踏み込んだときの、アクセルレスポンスは2.0Lディーゼルターボならではであり、トルクのある加速力で、いわゆるドッカンターボではなく、スムーズ且つ伸びのある加速力を実感することができますね。

ある程度加速した後のブレーキングにおいては、ブレーキがそこそこに柔らかめに感じますが、制動力としては非常に強めで、実際に踏み込んだ時の力と、ブレーキング性能とのギャップに若干の違和感を覚えますが、ある程度走行しているとすぐに慣れてくるポイントではありますね。

なお、加速が乗った状態でコーナーに差し掛かった時のコーナリングについては、「3008」の駆動方式が前輪駆動(FF)ということもあって、狙ったラインよりも若干ロール気味になっていたのは気になるとこと。
恐らくではありますが、これはステアリングホイールが小口径であることが要因で、低速かつ小回りを利かせることには大きなメリットはあるものの、ある程度スピードが乗っていたり、高速走行でのステアリング操作となると、操舵角が低速度時よりもロールが大きくなり、自身が想定していた進入域よりも少し外側に膨れたりすることもあるため、この辺りは操作の慣れはもちろんのこと、車体の荷重バランスをある程度想定していないと危険に感じるところではありますね。

あと、この個体には”SPORT”という走行モードが存在しますが、この走行モードが面白いの何の。
“SPORT”モードに切り替えるとアクセルレスポンスがより良くなることはもちろん、エンブレの利きも大幅に変化してくるのですが、一番の驚きは、”SPORT”モードで加速していくと、スピーカーから擬似的にスポーツカーのような攻撃的なエキゾーストサウンドを味わうことができます。
プジョーの考え方として、「車はファッションの一部であるため、車内においてもオシャレを追求するために、加速サウンドも五感で楽しんでいただきたい」という想いから考案された技術なのだとか。
このあたりは色んな角度から見ての走りの楽しみを味わえる大きなポイントで、私自身も度肝を抜かれた工夫ではありましたね。

【価格・競合について】
価格については、やはり一番勝負すべきディーゼルモデルを対象とすると、最大の競合はマツダ「CX-5」ではないかなと思います。
今現在、圧倒的な人気を誇るマツダのクリーンディーゼルモデル。その中でもSUV市場を総ナメにしつつある「CX-5」とは、間違いなく競い合えるのではないかと考えています。
ちなみに、マツダ「CX-5」のクリーンディーゼルモデルの価格は以下の通りで、価格的にはやはり大きな差はあるものの、「3008 GT BlueHDi」の車両本体価格4,260,000円はほぼほぼ標準装備されているものがほとんどのため、諸経費込での価格帯を考えると、大体50万円程度の差額までは縮めることができるのではないかと推測。
・ディーゼル車の2WD(FF)モデル・・・2,775,600円~3,299,400円(税込)
・ディーゼル車の4WDモデル・・・3,002,400円~3,526,200円(税込)

【気になる点】
やはり気になる点としては、シート調整が基本的に手動であるということ。
あとはセンターコンソールのオシャレなデザインのスイッチは非常に交換は持てるのですが、「どのボタンがどんな機能を果たしているのかがわからない」というのは致命的。直観的に見て判断ができるというのが、今の車には重要なポイントだと思うので、この辺りは今後の改良ポイントにつながるのではないかと思います。

【まとめ】
以上より、プジョー「3008」は、これまでイメージしてきたオシャレかつフランス車ならではのフワフワした乗り心地ではなく、スポーティ且つ走りを楽しむ「一つのファッションモデル」であり、SUV市場においては間違いなく国産車と競いあえるほどの強力なダークホースであると思います。

なお、プジョー福井の担当者さん曰く、「3008」の試乗を経験してしまうと、他の「308」や「208」「2008」といったモデルには戻れなくなってしまうとのこと。
それだけ、「3008」はかなり力を入れたモデルであり、日本においてもトップを狙いに行くほどに十分なスペックを持った自慢の一台であると思いますね。

これまでの試乗記録はコチラにてまとめております。