マイルドで乗り易いスーパーカー。マクラーレン「570GT」に試乗する

2020-05-26

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以前から気になっていたスーパーカー、マクラーレン「570GT」に試乗。
スーパーカーとは思えぬ、日常での使いやすさと長距離移動に長けた快適性をコンセプトとした
この個体の完成度には驚きの連発でした。
そんなマクラーレン「570GT」の試乗インプレッションを以下に記載していきたいと思います。


マクラーレンは、イギリスを代表するスーパーカーメーカとしても有名で現在の主要ラインナップは
 ・540C 新車価格:2,188万円~
 ・570S 新車価格:2,556万円~
 ・650S 新車価格:3,160万円~
 ・650S・スパイダー 新車価格:3,400万円~
 ・675LT 新車価格:4,353万円~
となっています。

今回試乗させて頂いたのは「570GT」という個体で、その価格帯は「570S」よりも200万円程上乗せされた2,752万円となります。
ちなみに「570GT」が世界初公開されたのは、今年の3月1日より開催されたスイスのジュネーブモーターショー2016。
それから約7か月の時を経て、マクラーレン大阪さんに到着し、11月より「570GT」の試乗が可能となりました。
それでは、スペックから試乗に至るまでのインプレッションをしていきたいと思います。

【570GTスペック】
 ・排気量3.8L V型8気筒ツインターボ
 ・最大出力は570ps/7,500rpm、最大トルク61.2kgm/3,500-6,500rpm
 ・駆動方式は後輪駆動のMR
 ・カタログデータより0-100キロ加速は3.4秒、最高時速は328km/h
 ・トランスミッションは7速デュアルクラッチ
 ・全長:4,530mm、全幅:2,095mm、全高:1,201mm
 ・車両重量:1,350kg

【外観インプレ】
今回試乗させていただいた「570GT」のボディカラーは、何とも表現の難しいブルーとグリーンが入り混じったようなカラー。
ホイールはスポーク数の多い、ハイグロス仕上げやブラック仕上げが施されていないノーマルのアルミホイール。
写真の写りからは少々分かりづらいのですが、ルーフはパノラミックルーフで、リアハッチも視認性を意識したガラス製となっており、車内の開放感をもたらす仕様となっていますね。

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また、これはボディの色合いによるものだとは思いますが、そこまでボディサイズは大きいものとは感じられず非常に小ぶりという感覚。
しかしながら、全幅が2,095mmとスーパーカー特有の幅広なサイズなので駐車場や狭い道での走行は、最新の注意を払う必要がありそうです。

車体のサイドを確認していきますと、フロントのフェンダーからリアにかけて一本の曲線にて描かれたような美しいラインが印象的で、マクラーレンの美意識の高さが伝わってきますね。

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リアを確認していきますと、マフラーは両サイドに配置され少々大きめのマフラーカッターが装着されています。
なお、リアは「570S」と比較しても大きな違いはなく、ほぼほぼデザインは同じのように感じられます。
(この辺りはド素人なので明確な比較ができておりません)

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写真では、確認しにくいのですがマクラーレンの大きな特徴ともいえるのがタイヤの小ささですね。
フロントのタイヤサイズが225/35R19、リアが285/35R20のピレリPゼロ・コルサのワンメイクとなっています。
ランボルギーニ「ウラカン」のタイヤサイズであるフロント245/30R20、リア305/30R20と比較してもタイヤ幅が20mmも違うのは大きな差ですね。
マクラーレン大阪さんの担当者曰く、このタイヤの細さが実現できるのは車体重量が軽いからこそ実現できるものとのこと。
タミヤ溝も深く、特にウェットでの走行性能は他社スーパーカーメーカと比較してもずば抜けているとのことです。
そしてもう一つの驚きとして、「570GT」の試乗車は”右ハンドル”であるということ。
関東や名古屋、福岡のマクラーレンディーラでは、基本的に左ハンドルの試乗車を準備しているとのことですが、右ハンドルを準備しているのはマクラーレン大阪さんのみ。

インテリアの写真を撮ることはできませんでしたが、アイボリーカラーのレザーシートで非常に硬めの印象でした。

まず、「570GT」に乗る前に、今回の試乗プランの説明を受けます。
試乗コースは大阪環状線~湾岸線の往復となるわけですが、まず行きは担当者さんによるドライブからスタートで途中のパーキングエリアにて交代し、湾岸線を降りてからまた高速に侵入し、ディーラへと戻るという流れになります。

【助手席インプレ】
まず、助手席に乗込むときはシートのドア側のステッチに座り込む形にて侵入しますが、これが意外にも乗り入れし易いわけですね。
乗り入れし易いといっても、あくまでも”スーパーカーにしては”というところがポイントで、身長182cmの私でも姿勢を無理して崩してまで乗るような印象ではないですね。

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さて、これからエンジン始動となりますが、エンジンの始動は一般車と全く同じでブレーキを強く踏んで、センターコンソールにあるエンジンスタートボタンを押すスタイルとなっています。
写真で見ると、赤丸にて囲まれた「START ENGINE STOP」という丸いボタンですね。

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始動時のエンジン音は、V型8気筒ツインターボエンジンだけあって非常に低いサウンド。
早速マクラーレン大阪さんを出て、環状線に乗込みます。
環状線に入り込むも、工事渋滞によりあまり加速することはできませんでしたが、完全に停車するような渋滞ではなかったので早々に湾岸線へと移ります。
湾岸線に入り込むや否や、担当者さん早速アクセル全開で飛ばします。
具体的な数字は言えないものの、正面からのGが上半身全体にかかるわけですが、硬めのレザーシートだからなのか思いのほかGを受けたときのシートとのフィット感があります。

肝心の乗り心地についてですが、上の写真にあるダイヤル「ノーマル」「スポーツ」「トラック」の3種類によって乗り心地が異なります。

「ノーマル」はまさしく長距離移動向けに設定されており、サスペンションの硬さが「スポーツ」「トラック」に比べて非常にマイルドで、
路面のロードノイズを大きく拾うことなく突き上げ感が無いように感じられますね。
これは後の試乗インプレ時においても同じことが言えます。

他の「スポーツ」「トラック」は、サーキット向けに設定されたものであり、トゲトゲしい乗り心地があるため、助手席に座っている私からすると、若干酔いの原因となりそうです(今回は助手席にて乗っている時間が短かったため酔いまではしませんでしたが…)。

【試乗インプレ】
途中のサービスエリアに立ち寄り車を一旦停め、エンジンストップボタンをプッシュ。
「570GT」は”P(パーキング)”ボタンが存在しないため、1速の状態 or “N(ニュートラル)”の状態にてエンジンストップ可能となります。

早速、車から脱出するわけですが、マクラーレンのはドアはバタフライドア(いわゆるガルウィングドア)と横幅を約70cm程有するので敢えて大型トラックの駐車場に停車していました。
今回担当者さんのサービスにより、両サイドのドアを開けた状態にて撮影させていただきました。
両サイドのドアを開けてみると、それだけ幅を取る分、より大きく見えますね。
一般駐車場に停めたとき、両サイドに他の車に停められてしまったら「ドア開けられないじゃん」ってなります。

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そんなことはさておき、早速ドライバーズシートに乗り込みます。
シートポジション(電動)とサイドミラー(電動)、ルームミラー(手動)を調整後、ブレーキを踏んでエンジンスタートボタンをプッシュ。
まず、ブレーキがめちゃくちゃ硬いこと硬いこと。
ブレーキのストロークが小さいこともあるせいか、かなり強く踏み込まないと動かないわけです。
この辺りは慣れだとは思いますが、そもそもマクラーレンはエンジンブレーキはかなり利きが強いと聞くのでフットブレーキはあまり多用する必要性はないのかもしれませんね。

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エンジンスタート後、ATモードではなくパドルシフトによるマニュアル操作を選択して、パドル”+”(1速)を手前側に引いて左右を確認しながら軽くアクセルを踏むと、パーキングブレーキが自動解除され、アクセルを離すとクリープ走行にて駐車スペースから脱出。
ここでの驚きは、マクラーレンは基本的にパワステレス+重ステのため、とにかくハンドルが重いこと重いこと。
※「570GT」のトランスミッションは7速デュアルクラッチのため、オートマ限定免許取得されている方でも運転可。
更にはクリープ走行も可能なので、渋滞時には非常に助かる仕様ですね。

走行モードは、「ノーマル」モードにて早速合流車線に突入します。
加速性能はやはりスーパーカーだけあって、「ノーマル」モードでもあっという間に速度制限域域まで到達。
スポーツモードに至っては、余裕で速度制限域を超えてしまいますので、エンブレを活用して即減速。
加速→エンブレ→加速→エンブレ→加速→加速…を繰返していましたが、高速走行域での車体の安定感は非常に高く、
少し急なカーブでも全くブレずに狙ったラインに沿ってきれいに曲がっていきます。

ちなみに、車線切替え時においては、リアハッチ部がガラス製になっているので後方視界はそこそこ良く、ドライバーズシートからサイドミラーまでの作りも細かく配慮されているおかげか、両車線の確認及び変更が非常に容易なわけですね。
大げさかもしれないですが普通車にて車線変更するときと何ら大差はないと思います。
(右ハンドルだから容易だからかもしれないですが、左ハンドルの場合はまた異なるかもしれません)

あとは、高速道路を下りてマクラーレン大阪さんまで移動している間、周りからの視線は非常に熱く、特に高速走行時は後ろからもの凄い勢いにて追いかけてくる車がチラホラ。
周りから注目を受けたり、追いかけられたりすることはスーパーカー乗りにとっては宿命かもしれないですね。

以上より、マクラーレン「570GT」を試乗してみて、パワステレス+重ステでありながらも、マクラーレン本来の”駆け抜ける・走る”パフォーマンスは、他のスーパーカーを圧倒するスペックである一方、エンブレによる減速時のバブリングといった”魅せる”パフォーマンスはまだまだこれから必要となる個体だと感じました。
また、乗り心地についても「ノーマル」モードであれば、路面からの突上げもなく非常にマイルドで運転し易い(まるで普通車のような)スーパーカーであると感じました。

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最後に、中々乗ることのできない「570GT」を試乗させて頂いたマクラーレン大阪さんに感謝です。