スポーツカーのジンクスを払拭した”色んな意味でハイパフォーマンス”な1台 レクサス「GS F」に試乗する

2020-05-26

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先日、レクサス宝塚さんにて「CT200h F SPORT」のエンジンオイル交換並びにナビゲーションの不具合調査を行って頂いている間、「GS F」の試乗をしてきましたので、以下に簡単なインプレッションを記載していきたいと思います。


【外観インプレ】
今回試乗させていただいたのは「GS F」という個体で、「GS250/300h/450hシリーズ」とは全く異なるレース仕様のマシンとなります。

「GS F」はフロントグリルのロア部とリアスポイラに「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスティック」が使用されており、可能な限り軽量化が図られていますね。

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ボディカラーは「ソニックシルバー」という正直地味なカラーではあるものの、他のディーラではまず見ることのできない希少なカラーでもあります。
担当者さん曰く、このソニックシルバーを展示・試乗車として取扱っているディーラは関西には無く、他県からわざわざ見に来られるお客様もいらっしゃるとのことです。

内装は「ブラック」と非常にシンプルですが、アルカンターラ素材を使用しています。

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今回、「GS F」のインプレは前回試乗した「RC F Carbon Exterior Package」との比較になります。
この「GS F」の車両本体価格は1,100万円(税込)、それに比べ「RC F Carbon Exterior Package」が1,031万円(税込)となり、69万円とそこまで大きな価格差はないものの、見た目のインパクトや”スタイリッシュ・クーペ”という付加価値を考えると「RC F」が良い選択に感じます。

一方で「GS F」はその車体の存在感は、「RC F」に負けず劣らずでありながら、2ドアクーペの「RC F」よりも、実用性の高い4ドアセダンであり、ファミリー用としても活用できるので、そういったレジャー以外の目的での付加価値を考えますと、「GS F」の選択が良いかもしれません。

足回りを見て行きますと、ホイールは「RC F」と同種のBBS製19インチ鍛造アルミホイール(メーカオプション)が装着されており、オレンジキャリパカバー(メーカオプション)も装着されています。

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ちなみにこれもまた「RC F」と同じになるのですが、この個体は純正のアルミホイールを履いているにも関わらず、「フロント 255/35ZR19+リヤ275/35ZR19」というサイズで、リヤタイヤが若干フェンダーからはみ出ているため、車検対応のためにモールカバーがつけられています。

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続いて、主要緒元の比較となります。

【GS Fスペック】
 ・全長/全幅/全高:4,915mm/1,855mm/1,440mm
 ・ホイールベース:2,850mm
 ・最低地上高:130mm
 ・最小回転半径:5.6mm
 ・車両総重量:2,105kg
 ・燃費:8.2km/L
 ・パワートレイン:V型8気筒DOHC 排気量5L
 ・最高出力:477PS
 ・最大トルク:530N・m(54.0kgf・m)

【RC Fスペック】
 ・全長/全幅/全高:4,705mm/1,850mm/1,390mm
 ・ホイールベース:2,730mm
 ・最低地上高:130mm
 ・最小回転半径:5.4mm
 ・車両総重量:2,000kg
 ・燃費:8.2km/L
 ・パワートレイン:V型8気筒DOHC 排気量5L
 ・最高出力:477PS
 ・最大トルク:530N・m(54.0kgf・m)

スペック比較していきますと、やはり車体サイズはセダンである「GS F」が大きいことが容易に確認できますね。
最低地上高についても、「RC F」と同様に130mmとそこまで低くないですし、だいたいの段差には擦ることなく、スムーズに乗り越えて行けて、街乗りや遠出の際の実用性に十分優れているように感じます。

あと、驚きなのは車両総重量が「RC F」と100kg程しか変わらないというところ。
「GS F」はサイズが大きいにもかかわらず、かなりの軽量化が図られていることがわかりますね。

【試乗インプレ】
まず、エンジン始動ですが、V型8気筒 5Lの野太いエキゾースト音がディーラ駐車場内に響き渡ります。
ただ、しばらくアイドリングさせていますと、そこまで派手なサウンドでも無い模様。
むしろ大人しいサウンドで、ご近所の目を気にする方にとっては最初のエンジン始動音だけがネックになるかなと言った感じです。

今回の試乗コースは、「RC F」と同様に比較的勾配の多い山道で、急加速や急減速を多用することが出来、以下の走行モードにもチャレンジすることができました。

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◆「ECOモード」
ECOモードは環境に配慮したドライブモードで、スロットル特性を穏やかに設計することで、エコドライブ中のドライバーのアクセル操作をアシスト、エアコンの稼働も制御し、燃費の向上に貢献するモードとのこと。

この走行モードは、主に峠道の上りで使用させていただきましたが、やはりベースとなる排気量5Lと余りあるパワーとトルクのおかげで、急な坂道でもスイスイ上ることができます。ただし、「ECOモード」というだけあって、加速のレスポンスは「NORMALモード」以上の走行モードよりも劣っているように感じますし、”あぁ、大分エンジンが唸ってるなぁ”という印象を受けますね。

「RC F」での走行のときは、アクセルを踏み込んだときの加速(0~50km/h)は、「もたつく」といった印象はあまり受けませんでしたが、やはり約100kgの車重が影響しているからなのか、「GS F」は少々加速が「もたつく」印象がありました。
今回は、峠の上り限定にてECOモードを使用しましたが、基本的な使い方としては、交通量の多い少ないに関係無い比較的平たんな一般道で活用できる走行モードなのではと思います。

◆「NORMALモード」
NORMALモードは市街地走行に適した走行モードということで、燃費性能、静粛性、運動性能のバランスがよく、一般道を走行する場合に最も適したモードという内容ですが、排気量5Lの477馬力はどこで使ったら良いの?と思えるぐらいの走行モードだと感じます。NORMALモードは、平坦な国道にて使用したのですが、車通りが非常に多い時間帯に試乗したため、思いきり踏み込んでのアクセルワークは実施できませんでした。

しかしながら、これだけ大きな車体でおまけに車内には3人乗車しているにも関わらず、軽くアクセルを踏んだだけで、ナチュラルに10km/h⇒50km/hまで加速してしまうあたり、こういった重量がかさむ条件の中でパワーを発揮するのが良いのかなと思えたりしますね。

◆「SPORT Sモード」
SPORT Sモードは、スポーティな走行に適したモードということで、アクセルレスポンスを向上させ、スポーティ走行に適したギヤに変速することで、コーナーの多いワインディングロードや高速道路などに適したドライバビリティを実現するということで、その名の通りNORMALモードより、更にキビキビとした走りをしており若干マフラの音が変わります。

SPORT Sモードは峠の上り・下りにて活用し、おまけに前・後車がいなかったので、急加速と急減速を多用させていただきました(助手席の相方さん、後部席の担当者さん申し訳ございません)。

アクセルを踏み込んでから一気に加速するまでに若干のラグはあるものの、加速しだしてからの速度メータの上がり方は驚異的です。
ちょっとでも気を緩めてしまったら簡単に3桁km/hに到達してしまいますね。
急加速したときのエキゾースト音ですが、ターボ車のような低い音ではなく想像していたよりも甲高いですね。
(蛇足ですが、もちろんフェラーリのエキゾースト音よりは低いです)

◆「SPORT S+モード」
SPORT S+モードは、サーキットなど極限走行に対応するモードで、SPORT Sモードより早いタイミングのシフトダウンと、より高いエンジン回転をキープすることにより、サーキットのような高負荷走行においてもダイナミックなドライビングを実現するとのことですが、今回実は一切使用しておりません。
車通りの多い一般道や勾配の激しい峠では「SPORT S+モード」を発揮することは難しいと判断しました。

総合しての乗り心地についてですが、乗り込んだときのシート位置は意外と高めで、シートとのフィット感もGood。
室内空間は広々としており、圧迫感のないストレスフリーな世界を演出していました。
レーシング仕様ということもあってシートは若干固めですが、この個体のホイールベースも長くドッシリとしていますので、車体の揺れもほとんどなく、長時間の運転も問題なさそうです。

急加速したときのGのかかり具合は「RC F」と同様、シートとの密着感がよく考えられており、正面からのGだけでなく、急カーブに侵入したときの横Gやタイヤと路面との摩擦と振動をしっかりと吸収してくれているように感じます。

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ちなみに、今回相方さんも助手席に同席のもとで試乗をしたわけですが、峠の急カーブを攻めたときの横Gによる揺れや、振動の影響はほとんど無、く全く酔わなかったとのことです。

相方さんは非常に車酔いしやすい体質なのですが、ハードな加速や減速、急カーブへの攻めといった、酔い・嘔吐となる3大要因を難なくクリアしていました。
スポーツカーのジンクスを見事に払拭した”色んな意味でハイパフォーマンス”な1台だと考えます。

【不満点】
今回試乗してみて、特にこれといった不満点はなかったのですが、敢えて挙げるとするなれば、「なぜこれだけの大きな車体をスポーツ仕様にしてしまったのか?」というところ。

スポーツカーは、身が引き締まった一切無駄のない洗練されたボディという先入観を持ってしまっているので、正直、自分の中では「GS F」がスポーツカーの1種として成り立っていないわけですね。

これは完全に個人の好みの問題ですし、全ての車にも言えることだと思うので適当に読み流していただけたら幸いです。

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【総括】
以上より、「GS F」はスポーティな仕上がりにとどまらず、ラグジュアリーと実用性も兼ね備えた、ある意味オールラウンドな一台と感じました。

一般道では堂々たる風貌にて、他を寄せ付けない特別かつラグジュアリーな車として活用する一方、高速道路やサーキットでは、V8エンジンを唸らせ、歓びだけでは収まらない陶酔感を味わえる、心躍るような、そんな一台ではないかと思います。

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【GS Fコンセプト】
 あなただけの走る歓びを、手に入れる。
 意のままに操る楽しさに、決まりはない。
 交差点を曲がるとき、サーキットを駆け抜けるとき。
 乗る人それぞれの、笑顔になれる瞬間がある。
 一般道からサーキットまで、多彩なシーンで走りを楽しめるGS Fは、
 さまざまな場面で心を魅了する瞬間と出会えるスポーツカー。
 どんな歓びを手にするか。それは、あなたが決める。
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