ポルシェ911GT2 RSの時速268km事故の衝撃供述。「速度を出した感覚がない」は嘘か真か。高性能車が招く”速度麻痺”と、5年を経て争われる危険運転の境界線

首都高速道路・湾岸線での凄惨な死亡事故の判決は、2026年1月に下される

2020年8月、神奈川県の首都高速道路・湾岸線にて、ポルシェ911GT2 RSが「時速268キロ」で走行し、そのままブレーキすることなく前方を走行していたトヨタbBに追突する大事故が起きました。

この事故により、トヨタbBに乗っていた内山仁さん (当時70歳)と、妻の美由紀さん (当時63歳)が死亡しました。

911GT2 RSを運転していたのは、当時彦田メンテナンスの役員だった彦田嘉之 被告(56歳)で、当時の証言では「スピードを出しすぎちゃった」「100km/hぐらいは出ていたかもしれない」と供述。

しかしながら、その後の調査で「268km/h」というとんでもない速度を出していたことが発覚しています。


2025年11月25日の横浜地裁にて初公判「妨害目的で運転した事実は無い」

こちらが、当時首都高速道路・東扇島IC付近にて発生した911GT2 RSとbBの事故。

この凄惨な事故から5年が経過した2025年11月25日、横浜地裁にて行われた初公判にて、彦田被告は「大幅な速度超過によって大変な事故をおこしてしまい、被害者、そして被害者の遺族に大変申し訳なく思っています。ただ、制御できず進行したことはないし、妨害目的で運転した事実はありません」などと起訴内容を否認しました。

弁護人も「高速度だったことは事実だが、危険運転致死罪については無罪が成立する」などと述べ、過失運転致死の罪にとどまるとして争う姿勢を示しています。

彦田被告は当初、過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕され、事故から2年後の2022年、危険運転致死の罪で起訴されていました。

彦田容疑者「268km/hの速度を出した感覚はない」

先ほどの初公判から1か月が経過した12月25日、日テレNEWSが新たに報道した内容として、彦田被告は時速268キロを出した自覚について「感覚はありませんでした」と答えたとのこと。

加えて猛スピードにて走行していた理由について「昨今の諸事情の影響にて、前方の交通量が経験がないくらい空いていて、緩やかな下り坂だったので出してしまった」と供述。

また当時の状況については、「車列はある程度の間隔を持って走っていた」「妨害目的があり得ない状況だった」と述べたほか、「事故の0.1秒の間には車線変更はできませんし、不可能です」と述べました。

スーパーカーは安定性が高く、速度感覚が把握しづらい

今回の横浜地裁での彦田被告の供述で、何とも興味深かったのが「268km/hの速度を出した感覚が無い」というもの。

一般道での200km/h以上の走行はもちろんアウトですが、今回事故した車両が大排気量エンジンを搭載し、加えてレーシング仕様の911GT2 RSともなると、268km/hという異常な速度であっても「車体の安定性の高さを考えると、100km/h程度の速度に感じられた」というのは、スーパーカーを乗る人々からすれば”あるある”なのかもしれませんし、ある意味で「真の恐怖」。

路面に這いつくばるかのようなタイヤに加え、全くブレない直進安定性、アクセルを軽く踏み込めば一瞬で180km/hを超えてしまう加速性能、そして「宇宙一ブレーキが効く」と言われるカーボンセラミックブレーキの組合せを考えれば、精神的にも「自分はスーパーマン」になったかのような錯覚に陥ってしまうのかもしれませんね。

特に今回のように、首都高速道路の湾岸線ともなれば、長く続く直線でおまけに緩やかな下り坂ですから、簡単にスピードが出てしまうのも理解はできます。

特にこのルートでは、スーパーカーのツーリングルートにもなっていて、たまに走行すれば常軌を逸した速度(おそらく200km/hは優に超えている)で、スーパーカー/スポーツカーが流しているのを見ると「無意識に速度を出してしまう危険区域なんだなぁ」と思ってしまうんですね。

2ページ目:彦田被告「200km/h以上の速度で走行したことは、”5~6回”はあった」