短命だったな…「奇跡のエンジン」とも期待されたマツダ・スカイアクティブXが開発・生産打切へ。今後はSKYACTIV-Zへと置き換わるようだが?

事前情報通り、SKYACTIV-Xは廃止の方向へ

マツダは2024年11月、2025年3月期第2四半期決算説明会の中で、2030年に向けた経営方針の進捗において、新開発エンジンとなるスカイアクティブZ (SKYACTIV-Z)を発表し、2027年中の市場投入を目指して開発を進めていくことを明らかにしました。

このエンジンは、現在マツダがラインナップするSKYACTIV-GとSKYACTIV-Xの両方に置き換えられる予定で、特にSKYACTIV-Xは広く普及することなく短命に終わるとも噂されていましたが、遂にSKYACTIV-Xエンジンの開発及び生産内り切りが決定したと報じられています。

これは国内メディア・日刊自動車新聞電子版にて報じられたもので、SKYACTIV-Xの開発・生産打ち切りの理由としては「搭載車種の販売が低迷している」ことや「電動車シフトの中で開発の優先順位が低い」ことからが主な理由とのことです。


そもそもSKYACTIV-Xは何だったのか?

ところで、マツダが自信をもって世に送り出したSKYACTIV-Xエンジンは、そもそもどのようなエンジンなのでしょうか?

このエンジンは予混合圧縮着火(HCCI))エンジンの一種で、マツダにとっても圧縮着火ガソリンエンジンの集大成ともいえる技術。

このエンジンが開発された背景には、SKYACTIV-Gなどの従来のガソリンエンジンに比べて排出ガスが少なく、更にはSKYACTIV-Dといったディーゼルエンジンに匹敵する燃費が期待できるというものでした。

ちなみに、このHCCIエンジンは日本仕様だと無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)を使用しますが、着火時にはスパークプラグの代わりに圧縮を使用し、希薄な混合気を迅速で均一に点火するというディーゼルに似た動作を行います。
※レギュラーガソリンも一応使用できるようだが、最高出力が抑えられるなど、スペックが低下する

混合気は、ガソリンエンジンとほぼ同じ方法で生成され、ディーゼルエンジンのような不均一な給気ではなく均一な給気を生成することもポイントです。

SKYACTIV-Xで期待された技術・性能とは?

なおHCCIエンジンに関しては、日本の自動車メーカーだとホンダや日産、欧州メーカーだとメルセデスベンツが多くの資金を投じて開発を進めてきましたが、どのメーカーも途中で開発を断念しているため、いわばHCCIエンジンはマツダにとって唯一無二のエンジンともいわれました。

そんなSKYACTIV-Xが登場した当初、マツダからは以下のような特徴が挙げられていましたが…

◆SKYACTIV-Xは内燃機関に革命をもたらすはずだった新技術

◆ガソリンとディーゼルの良いとこ取りをした技術

◆熱効率を27%向上させ、二酸化炭素(CO2)排出量を25%引き下げる

◆SKYACTIV-Gに比べて10%以上、最大30%に及ぶトルク向上を実現

◆燃費率はSKYACTIV-Gに比べて最大30%程度改善

こうして見ると、SKYACTIV-Xは夢の技術ともいえるマツダの集大成として注目を集めたわけですが、実際のところ上記の技術は達成されておらず、様々なパワートレインで提供されるのかと思いきや、排気量2.0L 直列4気筒自然吸気エンジンをベースにしたSKYACTIV-Xしか提供されなかったことも事実。

ちなみに、実際にマツダが挙げた成果としてSKYACTIV-Gに比べて、最高出力156hp → 190hpと約22%の向上、欧州でのWLTPテストにおいては、燃費性能は約10%向上したものの、二酸化炭素排出量は5%程度の引き下げに留まっているため、上記で挙げられた項目で見ると成果としてはイマイチ。

2ページ目:マツダが新たに開発するSKYACTIV-Zは、私たちの期待を超えることはできるのか?