BMW「X2」に試乗。スタイリングはクロスオーバーだけど乗ってみたらスポーツハッチバックの感覚

2020-05-26

さて、前々から注目していたBMWの新型クロスオーバー「X2」に試乗。
今回試乗させていただいたのは、以前展示車も拝見のBMW Fukuiさんで、試乗車種は展示車同様にスポーツモデルとなる「X2 xDrive20i M Sport X」。
以下にスペック(主要緒元)を記載しますが、ざっくり記載するとと2.0L直4ターボの四駆クロスオーバーとなります。

【主要緒元】
全長4,375mm×全幅1,825mm×全高1,535mm
ホイールベース:2,670mm
最低地上高:180mm
車両重量:1,620kg
最小回転半径:5.1m
トランクルーム:470L(後席折りたたみ時1,355L)
エンジン:排気量2.0L 直列4気筒DOHCターボエンジン
最高出力/最大トルク:192ps/280Nm
燃費(JC08モード):14.6km/L
駆動方式:四輪駆動(AWD)


今回の記事にて添付している画像ですが、試乗車は撮影しておらず、以前先行内覧会にて展示されたガルバニック・ゴールドの「X2 xDrive20i M Sport X」となりますが、この展示車は先行内覧会当日に即契約されてしまったとのことで、現在BMW Fukuiさんには展示されていないとのこと。

従って、試乗車はこのガルバニック・ゴールドではなくM Sport X専用となるソリッドカラーのアルピン・ホワイト1台のみ。
足回りのホイールはY字型スポークの19インチMライト・アロイホイールでタイヤ扁平率45とSUVらしからぬ低扁平を装着します。

外観のレビューは以下の関連記事①にてまとめていますが、改めて確認してみるとやっぱり「低くてワイド」。
BMWのエントリークロスオーバーモデルとなる「X1」のプラットフォームをベースとするも、ホイールベースは変わらずでありながら「X1」の方が全長+80mm長く、全幅は-5mm狭く、全高は+65mm高いため、よりスポーティなスタイルを意識したのが「X2」。

BMWのモデルは、「奇数」と「偶数」のモデルに分けられるのですが、奇数は”実用性”に重点を置き、偶数は”デザイン性”に重点を置いているため、ここに差別化が図られています。
そのため、この「X2」はクロスオーバーないしはSUVモデルというカテゴリに一応入りますが、ファミリータイプとしてではなく都会等の街中を走行することを想定したモデルとなるため、ターゲットとなる年齢層は20代~30代と若めに設定。

ボディカラーにおいても、「X2」のイメージカラーで新色のガルバニック・ゴールドも、「偶数」ならではのデザイン性に加えて独創性や個性に重きを置くことで、車とドライバとのつながりを親密にしたモデルなのだと考えています。

関連記事①:BMW「X2」見てきた。「X1」よりもコンパクトでスポーティ、スタイリングはクーペ・ハッチバック風【エクステリア編】(2018/5/19投稿)

続いてはインテリア。
こちらについても、以下の関連記事②にてまとめていますが、細かな点を見ていくと色々と工夫が有る様に感じられます。
試乗車のインテリアデザインは、マイクロ・ヘキサゴン・クロス/アルカンターラ・コンビネーションと呼ばれるM Sport X専用デザインで、シートカラーはブラック、カラードステッチはイエローを採用。

シートマテリアルはアルカンターラとなりますが、実際に乗ってみた感じではシートホールド感が強く、体にフィットする感じ。
シートの硬さが気になる方もいるとは思いますが、乗り慣れてくるとこの硬さが意外とクセになるかもしれません(腰痛になりにくいのがポイント)。

関連記事②:BMW「X2」を見てきた。内装はシンプル、操作性は高そうでも後席の実用性は微妙?【インテリア編】(2018/5/21投稿)

一通りの車両チェックを行ったら、早速「X2」の試乗スタートです。
ドアを開けてシートに乗り込みますが、ここで早速気になるポイントを発見。
ちょっとわかりにくいのですが、サイドシル(“M”ロゴよりも内側のプラスチック部)とシートまでのクリアランスが非常に大きく、実際にシートに乗り込むまでにある程度姿勢をかがめる必要がありました。

あくまで私が感じたことなのですが、シートが外側寄りではなく内側(センター)寄りになることで、「X2」の車体重心を中央下に集中させることがスポーツモデルやスポーツハッチバックに見かける設計となっているのですが、まさかのクロスオーバーモデル「X2」にも、それが考慮されているのは非常に驚き。

あくまでも乗降性を配慮するのではなく、偶数モデルならではの個性と走りの楽しさを優先したが故の配慮だと捉えており、多少の乗降りのし難さは二の次と考えて良いのかもしれません。

シートに乗り込んだら、強くブレーキを踏みながらステアリング(左のパドルシフト)後ろにあるエンジンスタートボタンをプッシュします。
エンジンスタート音は非常に静かで、2.0L直4ターボならではの低いサウンドと振動が伝達することなく、まるでハイブリッドモデルに乗っているかのような錯覚に。

「X2」はパーキングブレーキが自動式となるため、センターコンソールのシフトノブ右側にある”UNLOCK”ボタンを押しながら手前の”D(ドライブ)”レンジ側に引きます。
アクセルを少し踏み込み、パーキング解除してクリープ走行でスルスルと走りだす感じは非常に滑らか。

その後、ディーラ出口から県道に入る時の段差を降りたときの衝撃は非常に小さく、Mスポーツサスペンション特有の硬さが際立っているのか、強制的に振動を減衰しているようにも感じられ、ドライバや助手席のセールスさんを優しく包み込んでいきます。
この辺りは中々スポーツクロスオーバーでは味わえない特筆すべき点で、この時点でクロスオーバーではなく、”スポーツハッチバック”に乗っている感覚になります。

いざ公道に入って走りだしてみると、ドライバ視点から見るフロントの視界はクロスオーバーとは思えぬ程に低い位置。
現在私が乗っているレクサスのコンパクトSUV「NX」とは全く異なる高さで、どちらかというハッチバックやクーペの車に乗っているような印象を受けます。
それだけ車内のシート位置も低く作られていて、車体重心を低くすることが走行性能とハンドリング性能の向上につながるのだと考えられます。

もう一つは、車線変更する際に非常に便利に感じられたサイドミラー。
このサイドミラーには、「X1」では見られない長めのステーが取り付けられ、後方視界の視認性を向上しています。
偶数モデルとはいえども、必要な安全性には人一倍気を遣うBMWだからこそ成せる業だと思いますし、ステーを用いたこと自体がデザイン性を向上させたこともまた事実。まさに一石二鳥の工夫といえると思います。

続いては走行性能について。
アクセルを踏み込んだ時の加速性は非常に滑らかで、直4ターボ特有の伸びとメリハリを活かした走りではなく、自然吸気系のようなス~と走りだす滑らかさが特徴。
ただ、加速時にはやはりターボ特有の野太いエキゾースト音を奏でており、いかにも「ガソリンだけで走ってるぜ!」といわんばかりのトルクフルな走りを披露します。

真っ直ぐ走った時の力強さは特徴的で、おまけにカーブに差し掛かった時のコーナリングもまたマルチプレートクラッチを搭載した四輪駆動が特長となるxDriveのロールの少ないグリップ力を魅せてくれます。
そして、何よりもアンダーステアやオーバーステア時に駆動力を配分するトルクベクタリングが発揮されることで、安定した走りに持ち込むことができるのも特筆すべき点だと思います(ここに更なる低重心化が加味されるのでより安定度が増す)。

実際に試乗してみて感じたことは、乗る前は「背の低いクロスオーバー」という認識でいましたが、いざ走りだしてみると「スポーツハッチバック」としか思えないほどのスポーティさと硬さ。

メリハリはあるんだけども、「X2」ならではのシームレスで滑らか且つ安定したスポーツ走行は、他のクロスオーバーとでは比較が難しい程にカテゴリが完全単独化しているんですよね。

ぶっちゃけ「X1」や「X3」といった奇数タイプのクロスオーバーとの違いを挙げろと言われれば、嫌と言うまで出てきてしまう程に全く別物なので、「X2」は「X2」だけの新たなカテゴリとして確立してもおかしくない一台だと思います。
もちろん、他に類を見ないデザインと乗り味の工夫は長けていますし、実用性を敢えて切り捨てて、その分性能に全力を注ぐところも素晴らしいところ。
良いところもあれば悪いところもあるのが車の個性だと思いますが、悪いところをプラスに注げるだけのクオリティを持つのが「X2」の大きな魅力なのではないかと感じたりします。

これまでの試乗記録はコチラにてまとめております。