なぜマツダは、フルモデルチェンジ版・新型CX-5にてエアコン等の物理スイッチを廃止し、タッチパネルに集約したのか?その理由と経緯を語る
マツダはいつから「引き算の美学」から「引き算の微学」になったのか…
2025年7月10日に世界初公開された、マツダのフルモデルチェンジ版・新型CX-5。
先代モデルに比べて、全長110mm以上も延伸されるだけでなく、フロントマスクはCX-60~CX-90とは大きく差別化された魂動デザインを採用しています。
しかしその一方で、多くのユーザーが気になっているのが「物理スイッチを廃止したことによる、タッチディスプレイへの集約化」。
いわゆる長安マツダの新型EZ-60/EZ-6に準ずるようなミニマリストな内装に仕上がったわけですが、なぜマツダは「物理スイッチを最小限に減らし、タッチパネルに集約させた」のでしょうか。
マツダ「顧客から大型ディスプレイを好むという社内調査が得られたため、物理スイッチを廃止にした」

海外カーメディアmotor1.comが、マツダ北米事業部の広報担当マネージャーであるタマラ・ムリナルチク氏に対し、「どうして従来型の物理スイッチをほとんど廃止したのか?」と質問したところ、以下のような回答が得られたとのこと。
お客様のフィードバックに基づき、マツダの安全運転哲学を継承しつつ、使いやすさを最優先した新しいヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を開発しました。
新型CX-5では、従来のコマンダーからタッチスクリーン式のセンターディスプレイへと変更しました。
これは、ステアリングホイールから手を離す時間を最小限に抑える最適な手段であり、以下の機能を実現しています。
・高度な音声認識機能により、エアコン、オーディオ、ナビゲーションシステムなどの車両機能を操作可能
・ヒューマンセントリックなステアリングホイールスイッチにより、ドライバーの注意力に負担をかけずに操作可能
以上の内容が全てで、おそらくエアコン操作系をタッチパネルに集約した背景には、「エアコン関係は、フルオートエアコンにしてしまえば、ほとんど操作することは無いだろう」「高精度な音声認識により諸々の操作が可能なので、ステアリングから手を離さずに操作できるというメリットがある」といった内容が主だと思うんですね。

これは、マツダが今日まで多くのデータを蓄積し、タッチスクリーンへの過度な依存を避けてきたからこそ、マツダにとってのパラダイムシフトといえる瞬間だと思うのですが、実際に全世界の顧客の何割がタッチスクリーンを望んでいたのか、「物理スイッチを残してほしい」といったリクエストはどれだけあったのか?などの具体的な情報も気になるところ。
マツダは2019年、タッチスクリーンに対する考え方がまるで正反対だった

しかしながら、北米マツダのHMIおよびインフォテインメント担当主任エンジニアであるマシュー・バルブエナ氏は、2019年にMAZDA3が発売された際、以下のように述べていました。
私たちが調査した結果、ドライバーがどんな車両でもタッチスクリーン・インターフェースに手を伸ばすと、意図せずステアリングホイールにトルクがかかり、車両が車線から外れてしまうことが分かりました。
そしてもちろん、タッチスクリーンではタッチしている間、画面を見続けなければなりませんから、とても危険なことなのです。
そのため、タッチスクリーン機能を削除することに抵抗はありませんでした。
以上のように、タッチスクリーンでの操作においては、「ドライバーが目線をズラしてしまう恐れがある」「タッチパネルを操作するときは、直感的な操作ができず、タッチパネルに集中してしまう危険性がある」といった様々な懸念点を示していたため、「マツダ社としての考え」として見るとまるで正反対のように見えるんですね。
2019年と2025年では技術の違いはあれど、タッチスクリーンにおけるデメリットは変わらないと思いますし…
長安マツダが販売しているEZ-6/EZ-60にて、大型タッチスクリーンが採用されているが

ちなみにマツダは、中国や欧州市場向けにラインナップしているEZ-6/EZ-60にて、物理スイッチを最小限に抑えて大型タッチスクリーンに集約するレイアウトを採用していますが、このコックピットが採用されている背景には「中国ユーザーの思想」を考慮してだと思うんですね。
一方で新型CX-5は、欧州だけでなく北米や中東、アジアなどのグローバルモデルとしても展開され、ユーザーの考えがタッチパネルから物理スイッチへと回帰しているなか、マツダは時代と逆行した技術を盛り込んでいるため、ある意味で「注目を集めている」状態ですし、もしかすると注目を集める意味で意図的に物理スイッチを少なくしたのでは?との見方も。
2ページ目:マツダが時代に逆行して物理スイッチを廃止する一方、フェラーリがタッチパネルから物理スイッチに回帰した納得の理由とは?