これは知らなかった…ブガッティ・シロンのエアコン機能は「3LDKのアパート一室を丸々冷却」できるだけのパワーを持っていることが発覚
ブガッティは最高速を生み出すために、まだまだ見えない苦労が隠れているようだ
スーパーカーはもちろんのこと、乗用車や軽自動車では当たり前のように標準装備されているエアーコンディショナー(A/C)機能。
1933年頃より、A/Cユニットを車両に装備するようになってから、車内全体を冷却するだけでなく、最近では各乗員に対して冷却温度を独立で調整できるなど、その技術もどんどんと進化するようになってきましたが、そんな中でブガッティのエアコン機能は他車種と大きく異なる技術を持ち、更にはとんでもない冷却効果を持っていることが明らかとなりました。
ブガッティに8年間勤務し、現在はエアコン機能・空調システムを設計する女性エンジニアのジュリー・レムケさんによると、ブガッティ・シロン (Bugatti Chiron)/シロン・スポーツ (Chiron Sport)/ディーヴォ (Divo)などのシロンシリーズに搭載されるエアコン機能には、重要な課題が設けられているそうです。
具体的には、運転席と助手席に最適な温度を設定することとして、車両がどんなスピードにて走行したとしても、エアコンが迅速かつノイズなく機能することを確認する必要があるとのこと。
ブガッティのエアコン機能は走行スピードによって大きく依存する
一体どういうことなのかというと、ブガッティの場合は「速度」がエアコンに大きなハードルを与えるとのことで、250km/hを優に超えるようなシロンともなると、走行中の速度に応じて換気と空調を適切に切り替えていく必要があるんですね。
このように切り替える目的としては、空調システムは早い運転速度で空気の流れを変えるため、従来の車両ではフロントガラスの下端で空気が強制的に内部に流入するのですが、シロンの場合は250km/hに到達した瞬間に負圧へと切り替えられ、更にはラムエアフラップと最適化されたブロワーを備える制御システムにより、空気が車内へと入り続けるように保証しているそうです。
ブガッティのフロントウィンドウは、空力特性を向上させるだけでなく「別の問題」があった
更には、従来のコンパクトカーのようにフロントガラスの傾斜角が30度ぐらいなのに対し、ブガッティは21.5度の傾斜しかない一方で、コンパクトカーに比べてガラス面積は約1.5倍となる1.31平米と大きいため、それだけ太陽熱を多く受け取ってしまうわけです。
ここにパノラマルーフ機能となるスカイビューも装備されると、一気に車内への太陽熱が増えるため、より一層の車内への冷却効果が必要になるとのこと。
ブガッティのエアコンは3LDKの一室を冷却できるだけのスペックを持っている
そうなると必然的にエアコンユニットも巨大になるわけですが、ブガッティには最大10kWhのエアコン用コンプレッサーと、2つのエアコンデンサーを備えることでようやく冷却することが可能になるとのことで、この容量は80平米のアパート一室(家族4人が3LDKにて生活するレベル)に相当するほどの冷却効果を持つことになります。
これをクリアしない限り、車内はとんでもなく暑くなり、もしくはエアコンとしての冷却効果を発揮できない問題に陥るのだそう(アストンマーティン・ヴァルキリーもエアコンの開発には膨大なコストと労力をかけたとの情報も…)。
何とも全てにおいて規格外のブガッティ・シロンですが、常に最高のパフォーマンスを提供するためにエアコンにおいても一切妥協しない技術が盛り込まれているのは驚きで、そこもブガッティならではの課題と技術が生かされているのであり、スーパーカー/ハイパーカーならではのユニークなポイントなのかもしれません。
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Reference:motor1.com