アストンマーティン「DB11」に試乗。ある意味、隠れたスーパーカー界の重鎮のような存在

2020-05-26

少し期間が空いてしまいましたが、先週(5月20日(土)、21日(日))アストンマーティン大阪八光ショールーム主催のアストンマーティン試乗会に参加し、「DB11」に試乗してきました。

今回、初の試みとなるアストンマーティン大阪八光主催の試乗会ということで、試乗できる車両は「V12ヴァンテージ S クーペ」「Rapide(ラピード) S」「DB11 クーペ」の3車種で、何れから試乗したいものを選択するという形式となっているわけですが、やはり「DB11」の予約者数が殺到したとのことで、そのほとんどが40代以上の方々であったとのことで、20~30代の試乗希望者はまず居なく、やはり比較的年齢層の高いイメージのメーカであることを再認識しました。


【外観インプレ】
さて、今回試乗させていただいた個体は、「DB11 クーペ」という個体で、2017年モデルとなります。ボディカラーはアストンマーティン定番の「ストラタスホワイト」に、シートカラーは「ブラック&クリーム」となります。

この個体は、2ドア・ボディスタイルでありながら後席がちゃっかり用意されている2+2シート。
パワートレインとしては、排気量5.2L V型12気筒ツインターボエンジンを搭載した個体で、最高出力608ps、最大トルク700Nmを発揮。
加速性能においては、0-100km/hは3.9秒で、最高速度は322km/hにまで到達となっており、スピードを求める車というよりも、どちらかといえばラグジュアリー思考といった印象。

ライトは、LEDのシームレスを採用し、デイタイム・ランニングライトやサイドライト、方向指示やテールランプもオールLEDですね。

サイドを確認してみると、アストンマーティンという紳士的なイメージが強いおかげか、堂々且つスポーティなスタイリングが相まって、フェラーリやランボルギーニには無い”大人(アダルティ)”な雰囲気が漂ってきます。
こういった個体は、スーツなどのフォーマルな衣装が合いそうですね。

そして、V型12気筒エンジンは、フロントボンネット下にマウンティングされているため、フロントノーズが非常に長いこと長いこと。
ミドシップエンジンに乗り慣れていると、もしかしたら車両感覚が少し鈍る恐れもありそうです。

ちなみに、標準で装着されているシルバー・ホイールはダイヤモンド旋削仕上げで、フロントが9J×20でありながらタイヤは255/40 ZR20、リヤは11.0J×20でタイヤは295/35 ZR20になります。

リヤテールライトは非常に独特な”コ”の字型を描くデザインとなっていますが、他社スーパーカーと比較すると非常に大人しい印象。
見る角度によっては、ルーフエンドからリヤゲートにかけてフラットにも見えて非常に滑らか。それだけ一切無駄のない洗練されたボディに思えますね。

【スペック】
 ・パワートレイン:排気量5.2L V型12気筒ツインターボ
 ・最高出力:608ps
 ・最大トルク:700Nm
 ・駆動方式:後輪駆動(FR)
 ・トランスミッション:8速AT
 ・全長:4,739mm、全幅:1,940mm(ドアミラー除く)、全高:1,279mm
 ・ホイールベース:2,805mm
 ・燃料タンク容量:78 リットル
 ・重量:1,770kg
 ・重量配分:51%:49%(フロント/リア)
 ・ガソリン:ハイオク

上記のスペックの通り、やはり車体サイズはスーパーカーと変わらず幅広の低い車高。
また、排気量5.2L V型12気筒ツインターボエンジンに対して、最高出力608psに抑えられているのも、スピードを追い求めるというよりかは、ラグジュアリー性を向上させることに注力されているとのことで、この辺りはスポーツカーとは上手く一線を引いたところになりますね。
ちなみに、アストンマーティンと言えば、メルセデスベンツAMGと技術提携を結んでいるため、エンジンもAMG製かと思いきや、「DB11」は完全自社製になっており、ボア×ストロークが89.0×69.7mmでストローク量が79.5mmから短くなっていることから、排気量6.0L V型12気筒自然吸気エンジンのショートストローク型になっています。

【試乗インプレ】
さて、前置きが非常に長くなりましたが、早速「DB11」のドアを開けてみましょう。
ドアパネルが非常に長く、おまけにドアを開けたときにドッシリとした重厚感があります。
早速車内に乗り込みますが、意外とサイドシルの位置が高く・太いのですが、シート位置が思いのほか高い位置にあったため、車内への進入は非常にスムーズ。
ハンドルは左ではなく右となっているため、感覚的には国産車に乗っているような感じですね。
車内に乗り込んだ後は、シートポジションやサイドミラー、ルームミラー位置等の調整を行います。
ちなみに、「DB11」のシート調整(高さ、スライド、姿勢)はもちろんパワーシートとなっています。

エンジンをかける際は、スマートキーになっているため、ブレーキを強めに踏んでから、中央のエアコン真下にあるセンターのボタンが「エンジンスタート」ボタンとなっているため、そのボタンを押します(上の写真を参照)。
エンジン始動音は、やはりV型12気筒ツインターボエンジンだけあって、非常に大きな重低音が鳴り響きます。

ちなみに、”P”パーキングや”D”ドライブ等は、「エンジンスタート」ボタンの両サイドにあり、左から「”P”パーキング」、「”R”リバース」「エンジンスタート」「”N”ニュートラル」「”D”ドライブ」という配置となっています。

早速、「”D”ドライブ」ボタンを押してショールームを出るわけですが、いきなりお決まりの歩道から国道への段差を乗り越える難所が待っています。
ちょっと高めの段差となっているため、車体を斜めにしながらゆっくり国道に入っていきますが、まずこの車体剛性の高さに驚かされます。
揺れが全く無く、むしろ「段差を乗り越えたのか?」と思ってしまう程で、サスペンションもしっかりと働いていることから縦揺れや横揺れといった心配も無く、おまけに車体を全く擦ることなくスムーズに侵入することができました。

ディーラを出た後は、いきなり信号待ちで待機となりますが、停車時のアイドリングによる振動は全くなく、まるで高級ソファーに座っているような感覚で、車に乗っていることを忘れてしまう程に寛げる空間となっています。

信号が青に変わり、早速アクセルを踏み込んでいきますが、アクセルに対する加速レスポンスは非常に良く、加速時のドッカンターボでもないため、スムーズな加速をしていきます。
ちなみに担当者さん曰く、トラクションコントロール等の電子デバイスが有効化されているため、ホイールスピンは圧倒的に抑えられているとのこと(もちろんそんなべた踏みな加速は行っていないため、確認はできず)ですが、3速でも若干のホイールスピンを持たせているのは、アストンマーティンならでは嗜好とのこと。

ちなみに、走行モードはステアリング右上に”S”というボタンがあるので、このボタンによって「GT」「スポーツ」「スポーツ・プラス」といった3段階の走行モードに切り替えることができ、スピードメータのアニメーションが変化します。

更にステアリング左上のボタンでは、サスペンションなどのシャシーとエンジンやギヤボックス等のパワートレインのセッティングをそれぞれ独立して「コンフォート」から「スポーツ」と3段階で分けることができるという機能もあります。
この辺りは、マクラーレン「570GT」と共通した機能でもありますね。

エンジン始動時は、走行モードが「GT」となっているため、早速「スポーツ」に変更してみます。
停車時からアクセルを踏み込んだ時の、シャープなエンジンの吹け上がりとエキゾーストサウンドはもはや別物といっても過言ではないほどに吠えあがります。
加速レスポンスは「GT」以上に顕著に示されるだけでなく、アクセルを離した時のエンブレも大きく、「加速」⇔「減速」のメリハリがハッキリと分けられています。
それに合わせて、サスペンションのセッティングも併せるわけですが、やはりそのときそのときのシチュエーションに併せて、自身の乗り方や車の状態を区別することができるのは、GTスポーツならではの持ち味なのかもしれません。

乗り心地については、やはりラグジュアリー思考の個体ということもあって、非常にマイルド。
変にロードノイズを拾ったり、凹凸のある路面上を走行しても、大きな縦揺れが無いため、非常に安定した乗り心地が得られています。
もちろん、モードによっては足回りを硬くすることもかのうですが、今回の試乗コースは全てが街中だったため、「スポーツ」モードよりも「コンフォード」にしていた方がストレスなく乗れていたと考えられます。

走行中の視界についてですが、フロントガラスやサイドガラス、リヤガラスの面積が非常に大きいことが影響して、かなり良好な視界を確保できていると思います(但し、Aピラーの傾斜角がキツイため、人によっては見にくいというコメントもあるとのこと)。
正直、比較するモデルがあまり無いという問題もあって、難しいところではありますが、4ドアセダン(特に中型~大型)に乗っているときの視界と何ら変わらない印象。

【価格について】
実はアストンマーティンの大きな魅力の一つでもあるのが、その価格帯の安さだったりします。
V型12気筒ツインターボエンジンを登載したフラッグシップモデルであるにもかかわらず、車両本体価格は驚異の23,800,000円。
この価格帯の競合となると、
 ・ランボルギーニ「ウラカンLP580-2」・・・23,473,000円
 ・マクラーレン「540C」・・・22,420,000円
 ・フェラーリ「カリフォルニア」・・・24,583,000円
と、もはや各スーパーカーメーカのエントリーモデルとほぼ変わらない価格帯となるため、異常なまでに破格と言えると思います。

ちなみに、V型12気筒モデルないしはV12相当モデルともなると、
 ・ランボルギーニ「アヴェンタドールLP700-4」・・・43,173,000円
 ・マクラーレン「650S」・・・34,000,000円
 ・フェラーリ「F12ベルリネッタ」・・・35,800,000円
V型12気筒(相当)の価格帯が非常に高額であること並びに、「DB11」が非常にコスパの高いモデルであることが確認できると思います。

【総括】
以上より、アストンマーティン「DB11」は、堂々かつ紳士的な風貌の見た目を持つだけでなく、ラグジュアリーさとスポーティさも兼ね備え、おまけにコストパフォーマンにおいても、他社には真似できないずば抜けた高さを隠し持つ、ある意味スーパーカー界の重鎮と言っても良い個体ではないかと思います。

最後に、このような非常に貴重な経験をさせていただいたアストンマーティン大阪八光さん、そして、非常に熱くかつ丁寧に対応していただいた担当者様に心から感謝致します。

これまでの試乗記録はコチラにてまとめております。