ユーロNCAPが「車の大型タッチスクリーンはドライバーにとって危険」と評価。安全性の観点から「物理スイッチに戻すべき!MAZDA3が最も優秀」との調査結果も

タッチスクリーンは確かにスマートだが、一方で使い勝手やドライバーの安全性を損なう側面もある

近年の新車・新型車で積極的に採用されるようになっている大型液晶ディスプレイ。

中国の電気自動車メーカーや、アメリカの電気自動車メーカー・テスラ、更にはメルセデスベンツといった海外大手自動車メーカーでは、車内のコックピットに巨大液晶ディスプレイを搭載することで、スマートで近未来的な内装に作り上げる動きが見られますが、どうやらこの動きが、今後陰りを見せるかもしれないとのこと。

これは、欧州新車評価プログラム(ユーロNCAP)において、方向指示器(ウィンカー)やハザードランプ、ワイパー、ホーン(クラクション)、緊急SOSコールといった重要な機能のボタン/システム/ダイヤルを設けずに製造された新車に対して、”より低い安全性評価”が与えられることが判明。

つまりは、自走式車両の最も重要な操作類において、液晶ディスプレイもしくはタッチスクリーンを使用することは「極めて危険」であり、物理スイッチで操作する必要があることを訴えています。


タッチパネルや巨大液晶ディスプレイの過剰採用は、業界全体の問題につながっている

今回の問題について、ユーロNCAPの戦略開発ディレクターであるマシュー・エイブリー氏は、「近年の自動車メーカーにおけるタッチスクリーンの過剰使用は、業界全体の問題であり、ほぼすべての自動車メーカーが、主要なコントロールをセンタータッチスクリーンに移している」と説明し、加えて「こうした液晶モニターが頻繁的に採用されることで、ドライバーは道路から目を離さざるを得なくなり、注意散漫による事故のリスクが高まっている」と危険性を訴えているんですね。

そして同氏は、「2026年に予定されている新しいユーロNCAPテストでは、メーカーが基本機能に直観的な方法で、個別の物理的制御を使用することを奨励し、道路から目を離す時間を制限することで、より安全な運転を促進します」とコメント。

何気にユーロNCAPの新規則に寄せてきたのが、フォルクスワーゲン新型ゴルフ8.5

なお、これは液晶モニターと直接的に関連しているわけではありませんが、2024年1月末にマイナーチェンジ版が発表されたフォルクスワーゲン新型ゴルフ(Volkswagen New Golf 8.5)は、ステアリングスイッチを静電タッチ式から物理スイッチに変更していて、その理由も…

・操作しづらいから

・ミス操作が多いから

・押した感覚が無いから

・押せているかどうかわからず、何度も確認しなければならないため、走行中に目をそらして危険だから

といった顧客からの意見・クレームなどが挙げられ、それだけ静電タッチ式の評判が悪かったんですね。

おそらく今回のユーロNCAPの新基準も、こうしたユーザーの声はもちろんのこと、安全性の観点から、操作系を何でもかんでもタッチパネルや液晶モニターへと集約することは危険であると判断したのだと考えられます。

メルセデスベンツのハイパースクリーンは、まさにユーロNCAPの大きな障壁だと思うが

巨大ディスプレイに関して言えば、メルセデスベンツのハイパースクリーンが最もユーロNCAPの大きな障壁になると考えられますが、しかしメルセデスベンツも、こうしたユーロNCAPの方針をよく理解した上でボタンのレイアウトなどを考えていることが判明。

具体的には、最新モデルではハザードスイッチを完全に独立させたり、緊急SOSボタンをルーフ上部、そしてウィンカーはしっかりとレザーを使って操作するなど、しっかりとユーロNCAPの規則に準拠した車づくりに努めていることがわかりますし、改めてターゲットとする市場も欧州向けになっています。

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ただその一方で、新型メルセデスAMG SLクラスは、電動によるオープン/クローズが可能なソフトトップルーフを備えていますが、この開閉スイッチも物理タイプではなくタッチスクリーンに変更されたため(上の動画の3分37秒あたり)、特に雨で軽く濡れた時にはレスポンスが大きく鈍るので使い勝手としては最悪ですがら、こうした細かなところでもユーロNCAPが評価を下げて来る可能性も考えられそう。

2ページ目:テスラ新型モデル3のウィンカー操作はレバー式ではなくタッチ式で危険?