車というよりも、まるでファッションの一部のような存在。シトロエン「C3」に試乗する

2020-05-27

さて、以前から密かに検討していたシトロエンの新型「C3」に試乗。
2002年に初代となるBセグメントの正統派コンパクトカーとして発売され、2009年には2代目の5ドアハッチバックとして再デビューし、後の派生モデルとなる「DS3」のベース車両でもありますね。
今回は、約8年ぶりにフルモデルチェンジを果たし、ハッチバックモデルからコンパクトSUV(チック?)のモデルへと変化しました。

今回、シトロエン「C3」を試乗させていただいたのは、私の地元でもあるシトロエン福井さん。
こちらのディーラは、福井ヤナセ中央さんを母体に持ち、シトロエン福井さん以外にも、隣接するプジョー福井さん、ポルシェセンター福井さん、メルセデスベンツ福井さんを持っており、それらディーラは全て徒歩圏内に集約された欧州車ディーラとして各社しのぎを削っています。


【「C3」について】
さて、今回試乗させていただいた個体は、初期導入限定車で限定200台となる「C3 SHINE Debut Edition」という、ベースグレード「C3 FEEL」と上位グレード「C3 SHINE」の中間グレードとなります。
今年7月に発売した「C3」のグレードと価格は、
 ・ベースグレードの「C3 FEEL」・・・2,160,000円
 ・中間グレード(初期導入限定車)の「C3 SHINE Debut Edition」・・・2,260,000円
 ・上位グレードの「C3 SHINE」・・・2,390,000円
となります。

「C3」は2002年に初代を発売して以来、全世界で約350万台を売り上げるベストセラーモデル。今回のフルモデルチェンジによって、ユニークなデザインと多彩なボディカラーを持ち合わせ、販売台数を更に増やしていく姿勢を示していますが、日本においても今回のフランスならではの独特のデザインがどこまで”ウケる”のか非常に気になるところですね。

ちなみに、シトロエンが車づくりを行う上で最も重要としているキーワードが「アドバンストコンフォート」。つまりは、いつも穏やかな気持ちで乗れる確かな安心感と、誰にでもフィットする室内空間の使いやすさと心地よさ、そしてストレスフリーで静かな乗り心地を持つ先進的な技術を活かしていくことを重点に置いています。
「C3」もこのキーワードにフォーカスを当て、更に+αで”女性的”という点にも着目して作られた個体にもなっているみたいですね。

なお、「C3」のスペックは以下の通りとなっています。

【「C3」スペック】
全長×全幅×全高:3,995mm×1,750mm×1,495mm
ホイールベース:2,535mm
最低地上高:160mm
パワートレイン:排気量1.2L 直列3気筒ターボチャージャー
最高出力/最大トルク:110ps/205Nm
燃費:18.7Nm
燃料:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)

【外観インプレ】
さて、まずは外観からチェックしていきましょう。
やはり注目すべきはこのフロントフェイス。
正面か見ると全体的に丸っこい印象を受けるも、フロントヘッドライトは切れ長でシャープに変化。そのままシトロエンのエンブレムに沿った美しいラインを描いていますね。
ボディカラーは、何とも個性的な「アーモンドグリーン」にルーフは「ブランオパール」カラーのツートン仕様となっています。

ボディカラーについては、全7色用意されていて、それに合わせてルーフカラーも3色から選択が可能となっています。

ちなみに、フロントの三眼になっているデイタイムライトはLED製。
その下にあるヘッドライト(まさかのハロゲン)は四角から角をとったような丸っこいデザインとなっており、デイタイムライトとのギャップを設けることで、全体的にやんわりとしたデザインに落ち着かせています。
更にその下にあるフロントフォグランプも角を取ったような丸っこいライトとなっていますね。

ちょっと斜めから「C3」を見ていきましょう。
パッと見の印象としては、(映し方にもよりますが)パーツ同士のつなぎ目が少ない”シームレス”で滑らかなデザイン。
フロントボンネットからAピラーにかけて、ほんの微小ながらの傾斜角があるも、それを”丸み”でカバーすることで、フラットのように魅せるところもナイスな技術だと思いますね。

サイドのスタイリングとデザインも見ていきましょう。
シトロエンの特徴でもあるドアサイド下のエアバンプを採用。軽い接触(ドアパンチ等)からボディを守るプロテクション機能を持ちながらも、コミカルなデザインと個性を演出したキーアイテムでもありますね。
また、SUVを彷彿させるようなホイールアーチやアンダーパーツも健在で、女性っぽいデザインに隠れた力強さもアクセントとして加えられています。
ちなみにこの日は、「C3」のデビューフェア初日ということもあって、お客さんがとても多く試乗希望も殺到していたため、あまり撮影はできずでした。

足回りについては、16インチのアルミホイールを装着していますね。
このデザインは、上位グレードの「C3 SHINE」と共通になります。
なお、ベースグレードの「C3 FEEL」は、まさかの16インチスチールホイール+キャップ付きとなります。

リヤデザインもとにかく丸っこい印象。
フロントやサイドから見るとSUVチックに見えるのに、リヤから見るとなぜかBセグメントハッチバックに見える不思議。

リヤテールランプのデザインもかなり個性的。
四角の角をとったような丸っこい形状のテールが幾重にも重なり、ここにも統一性を持たせたオシャレなファッションアイテムのようです。

ラゲッジルームは意外と広めですね。
容量は300Lあるため、旅行用バッグ等は簡単に収納できそうです。
しかし、深さがあまりないため、高さのある荷物を積むのはちょっと難しいかもしれません。

さて、一通り外観をチェックした後は、車内に乗り込んでいきましょう。
まずは、ドア取っ手を開けたときの印象としては、非常に軽やか。
“パタン”というドアの開く効果音は、軽自動車でもコンパクトカーにも無い音ですね。
ちなみに、ドアを開けたときの内張りは以下の画像の通りで、プラスチック部分に四角の角をとった丸っこいデザインが4個×2列で配列されています。
内側のドア取っ手も角を取ったような丸っこいデザインで統一されていますね。

そして何よりオシャレだなぁと感じたのが、美しく仕上げ縫いが施されたドアストラップ。
これは、旅行をテーマにしたクラシカルな旅行カバンからモチーフを得た意匠で、”ベーシックだけど個性的”、”シンプルだけどエレガント”が似合うデザインとなっています。

ドアを確認した後は、早速乗車です。
ドアサイドシルは結構低めで、乗降りしやすい姿勢を保てますね。
やはり女性を意識したモデルということもあって、極力姿勢を崩さないようにフレーム周りも薄めに作られているため、オープンスペースを広めに設計していることから、姿勢の自由度がかなり効くように感じます。

ちなみに、シートデザインはこんな感じ。
限定モデルということで、ファブリックと合成皮革のバイマテリアルシートとなっています。
合成皮革の色合いがキャメルというのは何とも独特で、シート以外にもダッシュボードやステアリング、そしてマットにもその色合いが反映されています。
シートに座った際の感触は結構柔らか目で、やはりこういった点においても女性に優しい質感を求めているのかもしれません(もともと柔らかい可能性もありますが、あくまでも個人的な感想)。

角を取ったデザインはこういったエアコンの吹き出し口にも採用されていますね。

ステアリングにもさり気なく角を取ったデザインが。

センターコンソール周りはほとんどボタンが無く、エアコンのON/OFFや音量調整といったスイッチは全て7インチのナビゲーション画面のタッチボタンで操作。
正直この辺りはかなり不便さがあり、無駄のないシンプルなデザインを採用するにしても、やはり実用性を考慮するとなると、物理的なプッシュスイッチは必須だよなぁと思ったりします。

ちなみに、今回の一番の衝撃はコチラのドリンクホルダ。
何と、サイズがかなり小さく、缶コーヒーのような190mlサイズしか入らないとのことで、ペットボトルはおろか、コンビニやカフェのカップ系も全く入らないサイズ感ですね。

担当者さん曰く、フランスでは、基本的に車内で飲み物を飲む習慣がないとのことで、もし飲み物を飲む際は、カフェで飲むスタイルが一般的みたいですね。

なお、350ml缶やペットボトル等を収めるボトルホルダーは、シトロエンのディーラオプションにて購入可能ですが、1~2万円とかなり高額となるため、それであればカーショップ等で安いドリンクホルダを装着した方が断然お得と担当者さん。売っていかなければならない商品を敢えてオススメしないところはかなりの好感を抱けます。

【試乗インプレ】
さて、かなり前置きが長くなりましたが、早速「C3」を試乗しましょう。
シートポジションを調整していきますが、ここで驚きなのはシート調整が全て手動であること。これは、前回試乗したプジョー「3008」と同様で、シート調整に関して全グレード手動というところはちょっとマイナスなポイントですね。ちなみに「C3」のサイドミラーは電動ではなく手動式。

シートポジションの調整が完了したら、ブレーキを強く踏みながら、センターコンソールにあるエンジンスタートボタンを押します。
エンジンスタート時のサウンドは、やはり1.2Lターボということで少し重みのあるサウンド。

エンジン始動後は、センターコンソールにあるサイドブレーキを下に戻し、シフトノブにて”D”レンジに切り替えます。
さて、”D”レンジに切り替え後は、ゆっくりアクセルを踏み込んでいきます。
ちなみに、クリープは意外と弱めで、ほんの緩やか傾斜になるとアクセルを踏まないと前に進まないような感覚。

さて、軽くアクセルを踏みながら第一関門の段差を乗り越えていきます。これは、プジョー「3008」と同様にPSAの最新プラットフォームが採用されたことにより、大きな揺れはほとんど発生していないように感じますね。
段差を乗り越えたあとは、そのまま国道に入りアクセルを踏み込んでいきます。
アクセルを踏み込んだ時のレスポンスは、排気量1.2L 直列3気筒ターボエンジンだけあって、意外にもしっかりと追従しているように感じられますね。
ターボエンジンとは言っても、いわゆる”ドッカンターボ”ではなく、シームレスな伸びのあるターボのため、加速する際の身体的なストレスはほとんど無いように感じられます。

ただ、ある程度スピードが乗っているときに、フラットな路面からちょっとしたつなぎ目のある段差を乗り越えたときのダンパーはそこまで減衰しているようにも感じられず、どちらかという足回りは柔らか目で、フワフワとした乗り心地。
この辺りは、やはり女性を意識した個体ということもあって、定量的にスピードを上げて走行を続けてしまうと、乗り物酔いの激しい私にとってはちょっと酔ってしまいそうな程。

ある程度加速した後のブレーキング特性については、フットブレーキがそこそこ柔らか目なのか、自身が踏み込んだときの感覚と、車体の制動力にちょっとしたギャップが生まれ、更にブレーキを踏み込んでいかないと”止まらない”という印象。
個人的には、軽自動車に乗っているような感覚で、スポーティな車に乗り続けている人からすると、普段のブレーキ力よりも気持ち+1.5倍ぐらい強めに踏んだ方が良さそうです。

走行性能においては、駆動方式が前輪駆動(FF)ということもあって、ブレーキングしたときの車重がフロント方向に前のめり状態となり、車にかかる荷重がそのままダイレクトにフロントに集中するため、ステアリングを切った時の角度と車体の曲がり角において、こちらもちょっとしたギャップが生まれる形になります。とは言ってもほんとに微小なものなので、相当なスピードを乗せない限りは何も問題なくしっかりと曲がってくれるのですが、峠などのアップダウンの激しいところでの走行においては、あまりメリハリの強すぎるスポーティな運転をするとちょっと危険かもしれません。

【まとめ】
以上より、シトロエン「C3」は、街乗りやちょっとしたレジャー目的での移動、ゆったりとした走りを求める上では何一つ文句の無い性能を有していますが、個人的には可愛さに秘める力強さがもう少しあっても良いのかな?と思ったりするものの、それ以上にファッション性に富んだ個体でもあるため、「この車に一体何を求めるのか?」を改めて考えさせれた貴重な試乗であったように感じますね。

これまでの試乗記録はコチラにてまとめております。